日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
2019年4月
SWOT分析とクロスSWOT分析 2019.04.30
先週4月26日、MBA・中小企業診断士・認定支援機関の田中 清行先生を講師にお迎えし、近畿税理士会草津支部の研修会『認定支援機関による経営改善計画策定支援の勘所』が開催されました。「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、中小企業・小規模事業者が安心して経営相談等が受けられるため、専門知識や実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関で、わたしも含め、多くの金融機関、税理士、公認会計士などが認定されています。
研修のなかで田中先生は「経営改善計画」を策定する手法として、会社の経営者と共に、内部環境(会社組織内部)の ①強み<Strengths>② 弱み<Weaknesses> 、外部環境(社会、経済、法律、競合環境)の ③ 機会(ビジネスチャンス)<Opportunities> ④ 脅威<Threats>のそれぞれをカテゴリーで分析する「SWOT分析」と、そのSWOT分析で列挙された特徴を項目ごとに掛け合わせる「クロスSWOT分析」を解説していただきました。簡単に説明すると、機会(ビジネスチャンス)に対しては、強みを活かしてチャンスをモノにし弱みは外部経営資源により補完する。また、脅威に対しては、強みを活かし弱みは克服して脅威の影響を受けないよう経営戦略を検討するやりかたです。
ただ、このような過程を経たとしても、実際に経営改善にいたったケースは法人のうち約半数とのこと。(といっても、対象法人の半数が改善していること自体すごいと思いますが・・)税理士のなかには「経営コンサルティング」や「経営指導」はメインで行わないと言われる方も多いです。しかし、AIによる代替可能性が高い職業とされる税理士にとって、このようなコンサルティング業務とどう向き合うべきか、あらためて考えさせられる研修になりました。
4月1日から相続した空き家で節税しやすくなりました 2019.04.22
相続した空き家の敷地等を売り、一定の条件を満たした場合、譲渡所得から3000万円を控除できる特例(空き家譲渡特例)を受けるには、今年(2019年)12月31日までに譲渡する必要がありましたが、平成31年度税制改正により2023年12月31日まで4年間延長されました。これにより、どうしても本年中に(価格を下げてでも)売却しなくてもよく、来年以降でも適用要件を満たし、かつ、現在売却先を探されている方には朗報といえます。ただ、相続開始後、3年を経過する年の12月31日までに相続した空き家を譲渡する必要がありますので注意が必要です。
また、従来は被相続人となる親が相続発生の数年前に老人ホームなどに入所していると適用されないケースが多かったのが、以下①、②の条件を満たしていれば3000万円の控除が認められ、適用要件のハードルがすこし下がりました。『① 被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所していたこと ② 被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。』この新ルールは、税制改正法案の成立・公布後の「2019年4月1日以後の譲渡」から適用可能です。残念ながら3月31日までに譲渡してしまった方には適用されず、改正前の条件で判定することになります。
海津大崎の桜並木 2019.04.15
週末日曜が雨予報でしたので、土曜日のうちに滋賀屈指の桜の名所、高島市マキノ町の海津大崎へ行ってきました。ここは琵琶湖にせり出した唯一の岩礁地帯で、1936年大崎トンネルの完成を記念して現在約800本のソメイヨシノが湖岸4キロに沿って植樹されています。まずはその桜並木に行く前に、海津大崎入口にある「古民具・古道具&カフェ 海津」で休息。お店は築約二百年の蔵を改造した小さな骨董店兼カフェ。店内にはたくさんのアンティーク品が展示され、また琵琶湖を一望することができるテラスからは、桜並木を遠くから鑑賞することができます。
その後、「日本さくら名所100選」にも選定されている「海津大崎の桜並木」へ。湖岸沿いを歩いてみると、静かで神秘的な湖面の蒼色とせり出した桜の色とのコントラストが素晴らしく、湖水の波音も耳に心地よかった。日中は快晴で沖に竹生島も霞んで見え、ことし最後になるであろう花見を十分に堪能することができました。
法人成りの税務上のメリットとは 2019.04.08
3月に個人納税者の確定申告が終了し、4月には振替納税による指定口座から納税額の引き落しがあります(所得税および復興特別所得税 22日(月)、消費税等 24日(水))。個人事業者のなかには、「いっそ法人成りした方が納税額は少なくて済むのでは」と考えられる方もいるかもしれません。個々の事業の内容にもよりますが、事業所得が大きいほど法人成りの税務上のメリットはあるといえそうです。
法人成りによる主なメリットは、① 事業所得が大きいケースで考えると、所得税率は所得金額に応じて税率が高くなる仕組み(超過累進税率)ため「事業所得による所得税等・住民税・個人事業税」より、「法人が納税する(基本的に税率が一定)法人税等・住民税・法人事業税等」および「事業主・専従者給与者が受け取る役員報酬(給与所得)の所得税等・住民税」の合計額の方が少なくなる可能性がある ② 経営者が受け取る役員報酬の所得税等の計算で、給与所得控除が適用される。たとえば、事業所得額が1000万円(専従者給与控除前)あり、法人成りで役員報酬を事業主およびその親族に各 年500万円の役員報酬を支給した場合、給与所得控除額は 計308万円(平成30年分) ③ 設立法人開始時の資本金が1000万円未満の場合、1期目と2期目は原則として消費税の免税事業者(2期目は特定期間(前事業年度の上半期)の課税売上高および給与等支払額が1000万円を超えた場合は課税事業者)④ 法人が役員に支給する退職金は原則法人の経費にすることができる(個人事業では事業主自身に対する退職金は必要経費になりません)などがあります。
もちろん、法人成りにあたっては、司法書士などに支払う設立費用が必要だったり、新たに社会保険の加入義務が発生したり(もっとも、長い目で見たらメリットとも言えますが・・)、法人提出の申告書により添付書類が多くなったり等のデメリットもあります。いずれにしても、個々の事業内容に応じて、具体的な数値を基に検討されることをお進めします。
東大寺の桜 2019.04.01
いわゆる「花冷え」で肌寒い日の続くなか、昨日は奈良公園から東大寺にかけて、咲き始めの桜を鑑賞してきました。東大寺の大仏殿へ続く参道は多くの観光客であふれんばかりでしたが、途中あった南大門の2体の仁王像(国宝)はなかなか見応えがありました。仁王像はどれも高さ8メートルを超える寄木造りで、下から眺めると表情や筋肉などかなりの迫力です。こんな仁王像がだれも見られる屋外に安置されているところが、東大寺のすごいところだと思います。
それから行ったのが、すこし離れたところにある二月堂(国宝)。旧暦2月には有名な「お水取り」が行われますが、ここまで来ると観光客も少なくひっそりしたたたずまい。脇に灯篭が並んでいる石段を登り、たどり着いた堂内からは奈良市街を一望することができます。そして、昼食はいつも行く超人気カフェ「くるみの木」へ。旬の食材や奈良県産の野菜がふんだんに使われているランチメニューは、どれも季節感いっぱいであいかわらず美味しかった。