日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
中小賃上げ税制以外にも「繰越税額控除制度」があります 2025.01.26
令和6年4月1日以後に開始する事業年度、すなわち通常の1年間の事業年度で令和7年3月31日以降に決算日をむかえる中小企業者等(青色申告書を提出する一定規模以下の法人・個人事業主など)は、あらたに創設された中小企業向け賃上げ促進税制における「繰越税額控除制度」が適用されます。つまり、赤字企業でも将来的に賃上げ促進税制のメリットを享受できるよう、賃上げを実施した事業年度の税額控除額のうち、控除しきれない金額(=未控除額)は、その未控除額を翌年度以降5年間にわたって繰越し、将来発生する法人税から控除できるようになりました。(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushinzeisei2024.pdf)
また、賃上げ促進税制自体も税制改正により税額控除率や上乗せ措置が拡充されていて、赤字や前年度以前に発生した繰越欠損金などで、その事業年度では控除しきれない税額控除額でも制度活用のチャンスが広がっていますので、この制度を活用して、従業員の能力アップや人材の確保に役立て、長期的な視点で企業の競争力を高めていくことができます。
また、同じような中小企業者等向け「繰越税額控除制度」として、中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除(中小企業投資促進税制)があります。中小企業投資促進税制は、中小企業者等が機械装置等を導入する際、7%の税額控除(特別償却を選択した場合、取得価額30%に相当する金額の特別償却が可能)を適用できる税制です。税額控除限度額がその事業年度の法人税額の一定割合(20%相当額)を超えるために、その事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合、その控除しきれなかった金額(繰越税額控除限度超過額)について、一定の要件の下に1年間の繰越しが認められています。当期は赤字でも翌期以降が黒字となる見込みの場合、当期の税額控除を繰り越しておき、翌期以降の納税額を減額することで節税効果が高めることができます。(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5433.htm)
謹んで新春のお慶びを申し上げます 2025.01.05
令和七年。日頃のご愛顧を感謝し、皆様のご健勝とご発展をお祈り申し上げます。
わたしの元旦初詣は、いつも甲賀市甲賀町の油日神社へ行きます。参拝したのはお昼前でしたが訪れる方も地元の方のみ。ひっそりしていて空気も清々しく、いかにも山間の土地の方に守られている屋代といった趣で、非常に落ち着きます。この神社には、本殿・拝殿・楼門・回廊が配置されていて、それらはすべて国の重要文化財に指定。また、広い境内は映画やテレビドラマのロケでも度々使用されています。とくにわたしが気に入っているのは、楼門の左右から延びている回廊で、床張りで幅が広く、厳島神社の回廊を思い出します。静かに立派な神社の雰囲気を堪能したい方にはお勧めのスポットです。
『ポール・マッカートニー写真展 1963-64』 2024.12.22
先日、グランフロント大阪(北館)で『ポール・マッカートニー写真展 1963-64 Eyes of the storm』が開催されていたので、近畿税理士会の行事で大阪に行く途中にちょっと寄ってきました。この写真展は2023年にロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーのリニューアルオープン記念として展示されたものを日本で展示開催したもの。ポール・マッカートニー自身が撮影したものや、60年前からネガやコンタクトシートのままでプリント化されてこなかった貴重な写真を含む約250枚がデイスプレイされています。
ポールが写真に収めた1963年から64年という時期は、4人が急速にグローバルな名声の階段を駆け上がった重要なターニングポイントで、収められた写真にはリヴァプールからロンドン、パリ、そしてアメリカへと移動してゆく過程を体感することができます。展示物は写真以外にも有名な「エド・サリバン・ショー」などのビデオ上映もされていて、写真のビデオはビートルズがニューヨークに到着し、ケネディ国際空港内のラウンジでの記者会見の様子。ファンに囲まれ騒然とした雰囲気がリアルに収められています。
CNNニュースによると、ポールは19日夜ロンドンでライブイベントを開催し、元メンバーのリンゴ・スターもサプライズ参加したとのこと。ポールの年齢は80歳を超え、最後の日本公演(2018年)から6年経ち、最後のオリジナル・アルバム(2020年)から4年経っていて、さすがにもう現役とはいえませんが、ビートルズ時代の面影を十分に残してくれてファンにとって嬉しいがぎり。できるだけ元気でがんばってほしいものです。
国税庁、収受日付印押なつ廃止に伴うリーフレットを公表 2024.12.07
税務署等国税当局では、税務行政のデジタル化における手続の見直しの一環として、2025年1月1日から、申告書等(国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他の書類のほか、納税者が税務署に提出される全ての文書)の控え用の書面への収受日付印の押なつは行いません。したがって、書面申告等における申告書等の提出(送付)の際は、申告書等の正本(提出用)のみを提出(送付)するようになります。https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/index.htm
本件に関する詳細については、すでに国税庁HPに掲載するなどの方法により周知・広報されていますが、2024年11月22日付で更新された国税庁HP「申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A」では、2025年1月1日からの収受日付印の押なつ廃止にともない、希望者には当分の間の対応として税務署等の窓口で交付するリーフレットの見本が公表されています。https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/pdf/0023001-078.pdf#page=6
このリーフレットとは、申告書等を税務署で受けとった際の日付や税務署名を記載して交付するもので、納税者が申告書の提出事実を証明したい場合に使用されます。また、リーフレットにはメモ欄が設けられており、納税者が必要に応じて提出書類の内容を記載することができます。これでいくと、リーフレットをもらうだけで手続きも簡単ですが、一方で申告書の控えに直接押印されていないので信ぴょう性が低く、また当分の間ということなのでいつなくなってもおかしくないとも言えます。
税務行政は今後もデジタル化が進むことは明らかで、税務も色々と手続き面が変わっていきます。 納税者自身でも控えの作成と保管と提出日を記録・管理することが求められますので、納税者としても控えの保存を徹底し、提出日時をしっかり把握しておく必要があります。
消費税インボイス登録の取消し、個人事業者は12月17日までに 2024.11.23
昨年10月1日の消費税インボイス制度導入から1年以上が経過しましたが、当時は「インボイス登録しなければ仕事を失うのではないか」「取引先から消費税分の値切りをされるかもしれない」などの不安から、免税事業者にもかかわらず、とりあえずインボイス登録をしたという方は多いかもしれません。しかし、いざインボイス制度が導入され「インボイスに登録してたけれど、なくても困らない」と感じた事業者の方はいるかと思います。
たとえば、インボイス制度が始まっても取引先からはインボイスに関して言及されないケース、取引する相手が一般消費者や免税事業者の場合、もともとインボイス登録が必要なかったかもしれません。実際に2023年度の確定申告を行い、消費税を納税したことで負担の大きさを実感した方も多いと思います。(2024年は登録期間が1年のため負担も増えます)もし、インボイス登録の取り消しをしたい場合、「適格請求書発行業者の登録の取り消しを求める旨の届出書」に必要事項を記入し、納税地を所轄する税務署長宛に提出します。インボイスの取り消しの効力が発生するのは、提出した日の属する課税期間の翌課税期間なので、翌課税期間の初日から登録の効力を失効させたい場合、翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出が必要です。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024005-050_01.pdf
個人事業主の場合、2025年1月1日からインボイス登録を取り消して免税事業者へ戻りたい場合、15日前である2024年12月17日(火)までに届出書を提出しなければなりません。法人で3月決算の場合であれば、2025年4月1日からインボイス登録を取り消したい場合、2025年3月17日(月)までに届出書の提出が必要になります。15日前の日を過ぎて提出した場合、翌々課税期間の初日からしか効力を失えないので、提出期日にはご注意ください。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0023007-071.pdf
フリーランス法が11月1日に施行 2024.11.09
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)(令和5年法律第25号。以下「法」という。)が令和6年11月1日に施行されました。個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられます。公正取引委員会フリーランス法特設サイト | 公正取引委員会
フリーランス法は、組織という強者から、1人で働く事業者(法人/個人事業者)という弱者を守るという基本発想の下、規制対象となる発注者を「業務委託事業者」および「特定業務委託事業者 」、そして、いわゆるフリーランスを「特定受託事業者」として定義し、両者の間の幅広い取引を規制対象としています。「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、個人であって従業員を使用しないもの、法人であって一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないものが該当し、税理士等の士業も該当すればこれに含まれます。Microsoft PowerPoint – 【セット】240606_リバイス版FL新法周知用リーフ.pptx
フリーランスに業務を委託する事業者がフリーランス新法に違反すると、公正取引委員会ならびに中小企業庁長官または厚生労働大臣により、助言や指導、報告徴収・立入検査などが行われます。なお、命令違反や検査拒否などがあると50万円以下の罰金に処せられることもあります。また、発注事業者の従業員が違反行為を行えば、違反者当人だけではなく、事業主である法人も罰則の対象となることにも注意が必要です。
令和5年分で「2割特例」採用の個人事業者の方、令和4年分の課税売上高の確認を 2024.10.27
消費税のインボイス制度の円滑な実施のため、インボイス制度に係る支援措置がいつくか講じられました。そのひとつに、いわゆる「2割特例」があります。消費税法上の「2割特例」とは、インボイス発行事業者は令和5年10月1日から同日以後3年を経過する日までの日を属する課税期間については、消費税の納付税額を売上げに係る消費税額の2割とすることができる制度です。2割特例 特設ページ|国税庁
ただ、この「2割特例」は、本来免税事業者であった者を対象としているため、インボイス制度とは関係なく基準期間(個人事業者はその年の前々年度、法人はその事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1千万円を超えると消費税の課税事業者となってしまい、「2割特例」が使えなくなってしまいます。たとえば、令和5年分の確定申告で「2割特例」で消費税の申告をした個人事業者の方で、令和6年分の確定申告で前々年度の令和4年分の課税売上高が1千万円を超えた場合、引き続きでの「2割特例」の採用ができなくなります。2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁
また、「2割特例」の適用を受けたインボイス発行事業者が、「2割特例」の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。ようするに、令和6年分で「2割特例」の適用がなくなる個人事業者の方で、消費税の簡易課税制度を適用しようとする場合、令和6年12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要になりますので注意が必要です。
非居住者等から土地等を購入した場合、源泉徴収もれに注意 2024.10.12
非居住者や外国法人(以下「非居住者等」という)から日本国内にある土地等を購入し、その譲渡対価を国内で支払う方(買主)は、その非居住者等に対して対価を支払う際に、10.21パーセントの税率により計算した額の所得税および復興特別所得税を源泉徴収し(ただし、1億円以下かつ対価を支払う個人が自己または親族の居住用とする場合を除きます)、原則として支払った月の翌月10日までに納付しないといけないので、納付もれがないよう注意が必要です。No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき|国税庁 (nta.go.jp)
また、とくに納付もれが生じやすいケースとしては、買主が非居住者等(売主)に対して土地等の譲渡対価を日本国外で支払う場合です。このようなケースでも、その買主が国内に住所もしくは居所または事務所等を有するときは、国内源泉所得を国内において支払うものとみなして、源泉徴収しなければいけません。この場合の納付期限は、支払った月の翌月末日となります。(「土地等」とは、土地または土地の上に存する権利、建物およびその付属設備もしくは構築物をいいます)
したがって、買主には源泉徴収の義務が発生した場合、期日後で納税したとしても不納付加算税(納税額の10%。指摘される前なら5%)が課税されることになります。買主としては、自分の所得税ではなく売主側の所得税を支払わなければならない特殊なケースなので、わからないまま納税漏れになってしまうことが考えられます。売主の住所・振込先の口座・送金先・書類のやり取りの住所等に、海外の記載があるようなときは、売主に非居住者でないかどうかをよく確認するようにしましょう。
LA サンタモニカを散策 2024.09.29
今回は前回に引き続き、ロサンゼルス(LA)観光でMLB観戦以外のご紹介。まずは行ったのは、LA中心部のダウンタウンからタクシーで約20分のハリウッド。なかでもHollywood Blvd.などの歩道に埋め込まれた星形の敷石(ウォーク・オブ・フェイム:写真左)はシンボルになっていて、観光客が足元に向かってシャッターを切る様子はこの通りならではの光景。また、向かいにある1926年オープンの「エル・キャビタン・シアター」(写真右)は、現在ディズニー作品をメインに上映されていて、スペイン風コロニアル様式の外観はオープン当時の雰囲気が残っています。
LAのなかで私がとくにお勧めするのは、LA唯一の海水浴場があり100年以上の歴史を持つサンタモニカ。日中40度前後ある猛暑のLAのなかでも、サンタモニカは海岸近くにあり風光明媚で、いくぶんでも涼しさを感じることができます。メインストリート(サード・ストリート・プロムナード)は両側にカフェ・レストランやカジュアルブランド店が並ぶ歩行者天国になっていて、ストリートミュージシャンたちの演奏もあり、気楽に買い物や食事を楽しめます。
海岸のつきあたりには、世界一有名な桟橋といわれる「サンタモニカ・ピア」があります。1909年に造られた木造のこの桟橋は、ハリウッド映画にもよく登場するサンタモニカのシンボル的な存在。桟橋内にはレストラン・ギフトショップの他に無料遊園地や水族館まであり、この日もたくさんの人で賑わっていました。また、海岸は太平洋を西に向かって開けているので、夕日を眺めるには絶好のポイント。これもサンタモニカ観光の定番になっています。
LA ドジャースタジアムに行く 2024.09.14
最近はNHK BSで放送されているアメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)にはまっています。そして、先週末に生まれてはじめて日付変更線を超え、約11時間のフライトでロサンゼルス(LA)のドジャースタジアムまで行ってきました。ドジャースタジアムは、LA国際空港からタクシーで約30分のダウンタウンの高台にあり、試合開始2時間前の開門と同時に入場。スタンドはシックなブルーを基調とした色づかいで、天然芝とのコントラストがよく、これぞベースボールの聖地といった佇まい。
スタジアムを本拠地とするドジャースは、19世紀から存在する伝統球団で、スタジアム各所にそれを感じさせる展示物がディスプレイされています。写真左は黒人初のメジャーリーガーのジャッキー・ロビンソンが、1949年にはじめてのオール・スター・ゲーム出場を記念してつくられたもの。そして、写真右は歴代のドジャース選手のボブルヘッド(首振り)人形の展示で、最上段の左から2体目は野茂英雄さん(1995年入団)の人形も見ることができます。
観戦したゲームは、9月6日と8日(現地時間)のドジャース対ガーディアンズの2試合。普段テレビで見ているMLBのスーパー・スターたちを実際に見られ感激ものでした。(写真は大谷選手が6日に45号本塁打を放ってダイヤモンドを一周するところ)MLBは日本のプロ野球のような鉄板の鳴り物応援はなく、専属奏者のエレクトーンや電光掲示板に合せて応援します。そして、選手のひとつのプレーに観客個々で反応するので、このへんは日本とのスポーツ観戦文化の違いを感じました。