日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
甲賀水口宿の紅葉 2023.11.20
この一週間でかなり冷え込んできて、ようやく晩秋らしくなってきました。週末、わたしは甲賀市水口町に行くことがあり、東海道五十番目の宿場町だった街並みを楽しみながら、東海道からすこし外れた場所にある紅葉で有名な大池寺(甲賀市水口町名坂)へ寄ってきました。ここには江戸初期の近江の大名、茶人、建築家で各地に多くの名園を残した小堀遠州の作と伝わる枯山水様式の蓬莱庭園があります。
この大池寺(だいちじ)は丘陵に囲まれた閑静な地にある臨済宗妙心寺派の寺院で、敷地内にある書院よりつづく茶室前から見られる蓬莱山石組も美しく、サツキの大刈込みは5月下旬から6月初旬には見頃になるそうです。寺の周囲にはその名のとおり4つの大きなため池があり、その真ん中に本堂を建てたのが寺の始まりといわれています。この日はときおり霰(あられ)も降る荒れた天気でしたが、駐車場から寺に向かう散策に最適な小道端にあるモミジもようやく色づき始め、団体の観光客の方も鑑賞に訪れていました。
写真左は帰りに通った夕日を背にした水口城跡(甲賀市水口町本丸)の風景。現在は城内部の資料館には入れませんが、周囲から見るとなかなか立派な堀を備えている水口藩2万5千石の居城で、大池寺庭園を作庭した前述の小堀遠州が徳川将軍の上洛時にあわせて宿館として築かせたものといわれています。
令和5年分年末調整、国外居住親族に係る扶養控除の要件が変わります 2023.11.13
ようやく季節外れの暑さも和らいて今年もあと1か月あまり、12月からは(令和5年分)年末調整の時期になります。今回の年末調整での改正点では、国外に居住する親族(以下、「非居住者親族」)である扶養控除等の適用対象者のうち30歳以上70歳未満の者は原則除外されることになりました。ただし、① 留学により国内に住所および居住を有しなくなった人 ② 障害者 ③ その居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人については、例外的に適用対象となります。0022009-107_01.pdf (nta.go.jp)
従来から非居住者親族が居る場合、扶養控除適用には「給与所得者の扶養控除等申請書」の他、「親族関係書類」(戸籍の附表の写しそのたの国・地方公共団体が発行した書類、非居住者親族の旅券の写しなど)や「送金関係書類」(非居住者である親族への金融機関発行の送金書類、クレジットカード発行会社が発行したカード利用明細書類など)の提出または提示が必要とされていました。[手続名] 国外居住親族に対する送金関係書類の明細書|国税庁 (nta.go.jp)
これに加えて令和5年分からは、30歳以上70歳未満の留学生(上記①の者)については扶養控除等申告書等の提出時に「留学ビザ等書類」(外国査証(ビザ)や在留カードの写し)、38万円以上の送金を受けている者(上記③の者)は年末調整時に「38万円送金書類」が新たに追加されました。外国人を従業員として雇用している会社にとって、外国人が日本で給与等を得た場合には年末調整が必要となり、その際にもこれらの書類(とくに「38万円送金書類」)の提出または提示が求められますので注意が必要です。
『デイヴィッド・ホックニー展』 2023.11.04
今週は所用により季節外れのほぼ夏日となった東京へ。前日までにすべて予定が終了したこの日、新幹線で帰路に立つ前にすこし時間を見つけて東京都現在美術館(東京メトロ 清澄白河駅から徒歩15分)の『デイヴィッド・ホックニー展』へ行ってきました。デイヴィッド・ホックニー(1937-)はイギリスの画家・芸術家で、イギリスの20世紀の現代アートを代表する1人。この催し物はテレビでも紹介され話題になっていて(わたしもこれで知りました)、作品の展示はこの週末までで終了するということで、この日は外国人も含めたくさんの方が鑑賞に訪れていました。
作品自体は明るい陽光を感じさせる華やかな色彩で、室内の風景、自身の邸宅や人物を描いたものが多かったですが、なかには(撮影できる作品が限られていてご紹介できないですが)色彩を絞った白黒のみのデッサン画も多くあります。2018年のあるオークションでは彼の作品が約9000万米ドル(約102億円:当時の換算レート)で落札されたとのことで、これは今なお破られていない現存作家(現在86歳)による最高落札価格です。
写真右は彼の作品(池の睡蓮と鉢植えの花)を6枚組のiPad絵画でアニメーションとして6台の55インチ・モニターで上映したもの。現在、創作活動の拠点としているフランス・ノルマンディーの風景だそうで、アニメーションで作品が完成する過程も知ることができ、おもしろい表現方法になっています。
「フィッシング詐欺」への注意とその対策について 2023.10.30
電子メールやWebサイト等の電子的な技術を用いて、オンライバンク・クレジットカード会社・ソーシャルネットワークサービス・オンラインゲーム・決済代行サービス・e-コマースなどの企業名(ブランド)やサービスを装い、住所・氏名・銀行口座番号・クレジットカード番号・ログインIDやパスワードなどの個人情報を詐取することを「フィッシング詐欺」といって、わたしのようなTKC全国会の会員宛にも㈱TKCを装った「フィッシング詐欺」を目的とする詐欺メールが届いています。
このような詐欺への防止策を公開している専門機関によれば、次のような対策が有効とのことです。①クレジットカード情報等の重要情報の確認を求めるメールの添付ファイル・リンクへはクリックしないこと。(金融機関はメールを通じてクレジットカード情報等を確認することはない) ②よく利用するサイトは、ブラウザのお気に入りに登録し、そこから接続すること。メール内リンクは使用しないこと。 ③クレジットカード会社・銀行等の問合せ先をひかえておき、メールの内容が少しでも「おかしい」と感じたら、すぐに連絡して真偽を確認すること。 ④メール内リンクをクリックした後に、クレジットカード情報等を入力する画面が表示されたら、何も入力せずブラウザを閉じること。 ⑤Windows・ブラウザ・ウィルス対策プログラムなどは、常に最新版となるようアップデートすること。フィッシング対策協議会 Council of Anti-Phishing Japan | マンガでわかるフィッシング詐欺対策 5 ヶ条 (antiphishing.jp)
「詐欺メール」は内部リンクをクリックすると、クレジットカード情報等を入力する画面が表示され、その画面で入力された情報は、詐欺グループの手に渡ります。メール内のリンクをクリックした後、クレジットカード情報等の入力する画面が表示されたら、それは「詐欺」ですので、絶対に入力しないようにしましょう。もし、誤ってクレジットカード情報・口座番号を入力してしまった場合、すぐに金融機関に連絡してください。パスワードを入力してしまった場合であれば、パスワードの変更し以前のパスワードは2度と使用しないようにする必要があります。
改正電帳法、「宥恕措置」から「猶予措置」へ(①具体的な電子取引とは) 2023.10.23
改正電子帳簿保存法(改正電帳法)により、電子取引データは令和4年1月より電子保存が義務付けられましたが、令和4年度改正で「宥恕措置」が創設されたことにより、ひとまず電子取引データは出力した書面保存が認められていました。ただ、令和5年12月31日でこの「宥恕措置」は廃止され、令和6月1月1日以降は令和5年改正により「猶予措置」へ移行します。ただ、この「猶予措置」において電子データについては電子保存が求められますので、その準備が必要になってきます。0023006-085_01.pdf (nta.go.jp)0023006-085_02.pdf (nta.go.jp)
そもそも電子取引といわれるものは意外と多く、具体的には次のようなものが電子取引に該当します。①電子メール(メール本文・添付ファイル)による請求書・領収書 ②インターネットサイト(Amazon、楽天市場、モノタロウ等)からの物品購入 ③公共料金の請求書についてインターネットでの確認・入手 ④クレジットカード利用明細のインターネットでの受け取り ⑤電子決済サービス(電子マネー・二次元コード決済等)の利用 ⑥電子(Web)請求書や電子(Web)領収書の受け渡し ⑦複合機のFAX機能を使った取引情報の電子データでの受け取り(紙出力なし) ⑧DVDやフラッシュメモリでの請求書や領収書のデータの受け渡し ⑨専用のシステム(EDIシステム)を利用した取引 ⑩請求データのインターネットでの受け渡し ⑪従業員がネットで購入した旅費(航空券、新幹線切符等)の立替払いに精算(「TKC改正電子帳簿保存法特集号Ⅱ」より」
また、「猶予措置」により電子取引データの電子保存が必要になる一方、保存要件(「真実性の確保」および「可視性の確保」を満たす)に従って電子保存できなかったことにつき、所轄税務署長が相当の理由があると認め(保存義務者からの手続きは不要)、かつ税務調査での電子取引データのダウンロードの求めおよび出力書面の提示または提出の求めに応じることができるようにしている場合、電子データの保存要件は不要になります。また、「猶予措置」の他にも、検索要件が不要になる「検索要件不要措置」が設けられていますが、内容については次回ご説明したいと思います。
厚労省、「年収の壁・支援強化パッケージ」を公表 2023.10.16
厚生労働省は9月27日、年収が一定額を超えると所得税や社会保険料が増えるいわゆる「年収の壁」に対して、10月スタートする「年収の壁・支援強化パッケージ」を公表しました。社会保険料に関する壁は106万円と130万円とがあり、大きくその金額を超えない限り、社会保険料負担が収入増を上回り手取り額が減ってしまうことになるので、今回は主に社会保険の壁を対象としたものになっています。いわゆる「年収の壁」への対応|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
「106万円の壁」への対応としては、① 被用者保険の新適用時に労働者の収入を増加させる取組みをした事業主に労働者1人につき最大50万円を支援(キャリアアップ助成金)② 事業主が被保険者保険適用に伴い手取り収入を減らさないよう手当(社会保険適用促進手当)を支給した場合は、被保険者の標準報酬月額の算定から同手当を除外。「130万円の壁」への対応は、残業等による一時的な増収でも事業主の証明で被扶養者認定が可能になりました。その他として、企業が配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順等がフローチャートによって公表されます。Microsoft PowerPoint – 05_Â ÇŽ _ tÎnÁ xnSbnþÜV.pptx (mhlw.go.jp)
この「年収の壁・支援強化パッケージ」は、とくにパートタイムで働く方にとっては朗報といえるかもしれません。ただ、あくまで今回の対策は2025年に予定されている抜本的な年金制度の改正までの時限措置にすぎません。これによって年収の壁を超える労働を定着させ、その後は短期間労働でも厚生年金に入る対象企業の適用を拡大し、働く人すべてに社会保険を適用する方向へ向かうこともありえます。
「低未利用地等の譲渡特例」、今年の譲渡から適用範囲が広くなりました 2023.10.10
令和5年度税制改正の大綱において、「低未利用地等の譲渡特例」については、その適用期限を3年延長し、また適用範囲が広くなりました。「低未利用地等の譲渡特例」とは、地方部を中心に全国的に空き地・空き家が増加する中、新たな利用意向を示す者へ土地の譲渡を促進する目的で令和2年7月1日から導入されたもので、一定の未利用地を500万円以下で譲渡した場合、長期譲渡所得の金額から最大100万円(約20万円の税額低減)を控除できる制度です。001491974.pdf (mlit.go.jp)
今回の改正では、令和5年1月1日から令和7年12月31日までの間に譲渡された低未利用土地等が、『① 都市計画法に規定する市街化区域 ② 都市計画法に規定する区域区分が定められていない都市計画区域のうち、用途地域が定められていない地域 ③ 所有者不明土地対策計画を作成した自治体』の①から③のいずれかの区域内にある場合、譲渡対価の額の合計の範囲が「500万円以下」から「800万円以下」へ広げられました。平成26年度税制改正及び土地住宅政策に関する提言書(案) (zentaku.or.jp)
適用にあたっては申告前に(税務署でなく)市町村の確認を受ける必要があります。具体的には土地の所在地の市町村に申請書(添付書類:売買契約書、登記簿謄本、低未利用地だったことを証明できる書類、譲渡後の利用について確認できる書類)を提出し「低未利用地等確認書」を発行してもらい、所得税の確定申告書に添付して所轄税務署に申告します。確認書の発行には通常約1週間~3週間かかり、また年明けからは納税者の申請も集中することも予想されますので、それも踏まえて早めに準備されることをお勧めします。
来日5年を経過する外国人の方、来年確定申告が必要なケースも 2023.10.02
ことしも残り3か月を切り、そろそろ来年3月15日に期日となる令和5年分の確定申告が必要かどうか、そして納税額がどのくらいになるか、前もって確認しておく時期になりました。とくに日本にお住いの外国人の方で、もしことし来日後5年を経過し、本国で不動産所得や年金所得などがある場合、日本国内で確定申告が必要なケースも考えられますので、自身の申告要否の把握が必要です。
日本の所得税の取扱い上、日本に居住する外国人の方はその居住形態によって、課税される対象の所得が大いに異なります。まず、「居住者」、「非居住者」のどちらに該当するか、そして「居住者」に該当した場合でも「非永住者以外の居住者(永住者)」か「非永住者」を判定することが重要です。そのうち「非永住者」とは、『居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人』になります。No.2010 納税義務者となる個人|国税庁 (nta.go.jp)
そして、「非永住者以外の居住者(永住者)」の方の課税対象の範囲は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して課税対象(全世界課税方式)になります。したがって、年の中途で5年が経過し「非永住者」から「非永住者以外の居住者(永住者)」になった場合、それ以降の期間(令和5年6月30日で5年経過のケース:令和5年7月1日~12月31日)は本国で生じた所得も含めて、日本での確定申告(令和6年3月15日まで)が必要になると考えられます。
10月1日から新たに課税事業者になる方へ 2023.09.25
消費税インボイス制度の開始される10月1日まで、あと1週間を残すのみとなりました。新たな制度であるため、各事業者にとってその準備や対応が必要になりますが、特にいままで免税事業者として消費税の申告・納税や事務負担がなかった小規模事業者の方にとって、制度開始以降は最低限、次の項目について準備する必要があります。
まず、取得された「適格請求書発行事業者番号」(インボイス番号:T●-●●●●-●●●●-●●●●)を得意先に通知されましたでしょうか。得意先もあなたがインボイスを発行するかどうかで取扱いが異なってきますので、まだお伝えてしていない場合はすぐに伝えるようにしてください。また、インボイスとなる書類(請求書・領収書・レシート・納品書など)には、取得された「適格請求書発行事業者番号」を記載する必要があります。ただ、インボイスの様式自体は制度開始前の様式を引き続き使用しても問題ありません。
また、売上げに対して返品値引・割戻し等の取引をおこなう場合、「返還インボイス(適格返還請求書)」の発行が必要になり、得意先より返品を受けた際には「返還インボイス」を発行できるよう準備しておかなければなりません。一方で、税込金額が1万円未満の取引については「返還インボイス」を交付する必要はありませんが、この場合は消費税法上の売上にかかる対価の返還等として「売上値引き」処理する必要が出てきます。少額な返還インボイスの交付義務免除の概要|国税庁 (nta.go.jp)
9月27日(水)は、消費税中間申告分の振替日になります 2023.09.18
個人事業者の方で、令和4年分の確定消費税額(地方消費税額は含みません)が48万円を超える方は、消費税及び地方消費税の中間納付が必要になります。その中間申告分(年1回)の法定納期限は8月31日(木)でしたが、すでに振替納税の手続きをされている個人事業者の方については9月27日(水)に指定された預貯金口座から引落しされますので、あらかじめ預金残高の確認をお願いします。中間申告分の納期限及び振替日について|国税庁 (nta.go.jp)
消費税の中間納付とは前年の納税額を基礎として、その年の消費税を先払いする制度で、最終的に確定申告では正しい税額を算出して差額分を納税(払い過ぎの場合は還付)します。消費税の課税期間は原則1年(届け出により3か月ごと又は1か月ごとに短縮することも可能)ですが、あまりに大きな金額になると一括払いが納税者の負担になってしまいます。そこで、税額が大きくなるほど分割して、納税の負担を分散しようとする目的から中間納付という仕組みがあります。
ただ、どうしても振替日に残高が不足してしまう場合、振替納税ができなくなってしまい、法定納期限の翌日から納付日までの期間に対応する延滞税が本税と納付する必要が出てきます。もし、振替日に納付できない事情がある場合、所轄の税務署(徴収担当)に説明して手続きを進めれば、滞納処分の猶予や延滞税の軽減など受けられることもありますので、前もってご相談されることをおすすめします。No.9206 国税を期限内に納付できないとき|国税庁 (nta.go.jp)