日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
国税庁を装った不審メールに注意 2022.10.24
先週、法人事業者へ国税庁を装った不審メール(差出人:’’e-Tax(国税電子申告・納税システム)’’<e-tax.nta.go.jp@gmail.com>、件名:税務署からの【未払い税金のお知らせ】)が届いているケースがありました。メールの内容は、このメールを受け取った法人事業者は所得税(法人税と間違っている?)または延滞税(4万円)を納付しておらず、もし納付期限(メールを受け取った日、したがって直ぐ支払わなければいけない)までに納付しないと、不動産・自動車・給料・売掛金などの債権などの差押処分に着手するというもの。
文章自体は表現が日本語として不自然で、ところどころ怪しげな中国漢字も混ざっているので、落ち着いて読んでみると不審メールと判りそうなものです。いずれにしても、延滞税などを支払うためクリックするメール上のアドレス(https://www.e-tax.nta.go.jp/)は実際の国税庁ホームページアドレス(https://www.nta.go.jp/)とは異なるので、絶対にアクセスしないようにしてください。税務署へ電話で問い合わせると、同じようなメールが他の法人事業者にも届いていて、現在アクセスしないよう呼びかけているとのこと。
税務署職員のお話でもありましたが、国税の納付を求める旨や差押えの執行を予告する旨があった場合でも、必ず文書にて納税者の方へ通知するので、このようにメールを送信することはありません。国税庁を装った不審なメールの実際の文面および注意点の詳細については、e-Taxホームページにも掲載されています。このように不審と思われるメールが届いた場合、メールを開封せず削除するなど、取扱いには十分は注意するようお願いいたします。
急激な円安、外貨預金で確定申告が必要なケース 2022.10.17
最近、急激な円安の流れが加速していて、2022年の年初114円台でスタートした米ドル円レートは先週末でついに148円台へ。米ドル等の外貨預金をお持ちの方は、2022年中に円転して「今年中に利益を確定する」という方も多いと思います。この場合、その利益額に対し、所得として令和4年分の確定申告書の提出(2023年3月15日まで)が必要なケースが出てきます。
たとえば、1万米ドルの外貨預金の場合、1米ドル=110円のときに円を外貨預金にし、1米ドル=140円で外貨預金から円に戻すと、28万円の利益(140万円-110万円-2万円(為替手数料))に発生します。この28万円の利益はいわゆる「為替差益」といい、個人の納税者にとっては「雑所得」の扱いで申告する必要があります。ただ、年収2000万円以下の給与所得者で、このような外貨預金の為替差益(「雑所得」)を含めた給与所得以外の所得が20万円以下の場合、医療費控除などで確定申告をしない限り、あえて申告は不要になります。
一方で、住民税の申告は確定申告とは異なり、収入の額にかかわらず1月1日に住民登録をしている市町村に対し、申告する義務があります。たとえば、会社員などの給与所得者の方(年収2000万円以下)が外貨預金を円に転換し15万円の為替差益を得ても、それ以外に所得がないとすると確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要で原則として住民税が発生します。住民税の申告を行わないと、国民健康保険料が正しく算定されない、所得証明書や課税・非課税証明書が発行されないなどの不都合が生じます。住民税の申告に関しては、このように、ご自身で住民税のみ申告するパターンもあり得ますので、該当するかどうか確認のうえ正しく申告するようにしましょう。
資材高へ対応「大津市原油価格・物価高騰等対応給付金」 2022.10.11
大津市は、市内に事業所または事務所がある中小企業者等・個人事業者を対象に、コロナ禍における原油や穀物等の物価高騰に伴う仕入値の増加に対し、事業継続を目的として「大津市原油価格・物価高騰等対応給付金」の支給することになりました。対象となる法人・個人事業者は、大津市内に事業所等があれば、本社・本店または住まいが大津市外にあっても対象になります。(ここでの「中小企業者等」とは、中小企業等経営強化法第2条第1項に規定する中小企業者および社会福祉法人等の「中小企業者の要件」に準じ各要件を満たす者をいいます)
適用要件は、『① 直近の決算期における原材料仕入価格の割合が、製品等に係る売上高のうち30%以上を占めている ② 令和4年5月分から同年11月分の任意の連続する3か月分において、売上高に占める原材料仕入価格の割合が、①の割合から3%以上増加』で、以上の①および②のいずれにも該当する者には、中小企業者等 20万円・個人事業者 5万円が給付され、申請書の受付は令和4年12月28日(水)までになっています。
添付書類として適用要件の確認のため、中小法人等・・確定申告書別表一の写し・法人事業概況書(表・裏)の写し、個人事業者・・確定申告書(第1表・第2表)の写し・所得税青色申告決算書か収支内訳書の写し、一方で令和4年5月分~11月分の間における売上金額および仕入金額を確認する帳簿等としては、月毎の試算表や売上台帳がそれぞれ必要になります。詳細については滋賀県ホームページに説明されているので、そちらをご覧ください。
国税庁、「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」公表 2022.10.03
今週から10月に入り、2023年10月に導入される「消費税インボイス制度」まで1年、そして10月1日より登録を受けるための申請期限2023年3月31日まで半年足らずになりました。ただ、消費税の納税義務のある法人および個人事業など課税事業者 約300万件のインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)への登録はあまり進んでないようで、8月末時点でインボイス登録率が法人 42.26%、個人事業者 9.9%にとどまり、登録件数の総数も100万件に満たない状況(東京商工リサーチ調べ)とのことです。
このような中、9月22日国税庁は「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」を公表しました。こちらは、インボイス制度開始まで準備すべき基本項目が4ページにわたり、チェックシート形式で用意されています。1ページ目の「インボイス制度の概要」、2ページ目の「登録編」(自社として、登録する OR しない)、3ページ目の「売手編」(自社が売上先に対する「売手」としての準備)、4ページ目の「買手編」(自社が仕入先に対する「買手」としての準備)で構成され、文章もイラスト付きでやさしい言葉に置き換えて作成されています。
国税庁は併せて「インボイス制度特設サイト」を設け、インボイス制度に関する説明会の開催案内や制度の概要に関する各種資料等も掲載し、一方で公正取引委員会も自身のホームページで、免税事業者や取引先が免税事業者である場合の対応に関して「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」で解説しています。いすれも、「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」の1ページ目にあるQRコードで読み取ることができますので、チェックシート同様、有効に活用されるとよいでしょう。
「低未利用地等の譲渡特例」と固定資産税等清算金 2022.09.26
全国的に空き地・空き家が増加する中、新たな利用意向を示す者への土地の譲渡を促進する目的で、令和2年度税制改正により創設された「低未利用地等の譲渡特例」、今年12月31日まで一定の低未用地等を500万円以下で譲渡した場合、長期譲渡所得の金額から最大100万円を控除(約20万円相当の減税)できるもので、適用に当たっては申告前に市区町村の確認を受ける必要があります。国土交通省が公表した確認書の交付実績では、令和2年7月から12月までが2,060件、令和3年1月から12月までが3,090件で、所有期間30年以上の土地等が約6割を占めるとのことです。(『週刊税務通信No.3719 令和4年9月12日』)
「低未利用地等の譲渡特例」の適用については、「譲渡の対価の額」が500万円以下となっていますが、土地の譲渡に伴って受領した固定資産税等の相当額を売買代金に加える必要があることに留意しなければいけません。一般的に年の途中で土地等の売買契約を締結する場合には、その土地に係るその年の固定資産税等を、1月1日現在の所有者である売主が納税義務者として負担しているため、未経過分については期間按分して清算し、買主から売主に支払うことになります。
もし、土地の譲渡に伴って受領した固定資産税等相当額を売買代金に加えると500万円を超えた場合、「譲渡の対価の額」が500万円を超える譲渡となり、「低未利用地等の譲渡特例」の適用を受けられないことになります。売買代金の決定にあたっては、売買契約書の固定資産税等負担額の清算に関する文言を十分確認のうえ、固定資産税等相当額も含めて検討する必要があります。
社会保険の適用、10月より変更があります 2022.09.20
来月10月より、パート・アルバイトの社会保険の適用対象が、現在の従業員501人以上の企業から、従業員101人以上に拡大されます。社会保険加入の義務化の対象は『① 週の所定労働時間が20時間以上 ② 月額賃金が8.8万円以上 ③ 2か月を超える雇用の見込みがある ③ 学生でない』ですので、従業員数101人~500人の企業で、このすべての条件を満たすパート・アルバイトの方は、新たに社会保険の加入義務が出てきます。
これにより、配偶者の社会保険上の扶養に入るための条件は、年収130万円未満から年収106万円未満(月額8.8万円未満)に変わります。今後も引き続き配偶者の扶養の範囲内で働きたい場合、勤務時間を調整しないといけません。いずれにしても、事業主として自社の状況が把握できた段階で、従業員(パート・アルバイト)の勤務時間や給与に対する考え方や希望などどの程度受け入れるか、会社の方針を明確にする必要がでてきます。
雇用保険料についても「年度更新」の際、ご説明しましたが、年度途中の来月10月より、労働者負担が3/1,000から5/1,000(一般の事業:労働者負担)に改定されます。これにともなって、従業員の方の給与計算も変更になります。ちなみに、滋賀県の最低賃金は2022年10月6日(水)より、時給額 896円から時給額 927円(31円増)への見直しが決定しました。この最低賃金は常用・パートなどの雇用形態を問わずすべての労働者に適用されるものです。事業主は最低賃金額以上の賃金を支払う義務がありますので、適用もれが起こらないよう注意しましょう。
陶芸家ふたりの彫刻作品 2022.09.12
まだまだ残暑がきびしい週末、二人の陶芸家の作品を観に京都へ行ってきました。いく分は回復したといえ街中の観光客はまばら、外国人観光客にいたってはわずかに見かける程度。先週9月7日から水際対策が一部緩和されたとのことですが、やはり新型コロナ前のようなインバンド効果の水準には未だ程遠いようです。
そのような中、7月30日から京都国立近代美術館(岡崎公園内)で催されている「生誕100年 清水九兵衛/六兵衛」へ。清水九兵衛はもともと「六兵衛」の名で陶芸家として高い評価を受けていましたが、1966年から彫刻作品を発表するようになり、名前も「九兵衛」を名乗るようになります。写真の彫刻作品(いずれも撮影可)は、「環境とのAFFINITY(親和)」がテーマ。実はこの朱色の金属を使用した作品、路上アートとしてJR京都駅大階段4F・室町小路広場(作品名:朱甲舞)や京都市勧業館みやこめっせ前(作品名:朱鳥舞)など、JR京都駅から三条京阪駅にかけ8か所で展示されているので、一度是非ご覧になられたらいかがでしょうか。
そして、もう一人は、大正から昭和40年代にかけ活躍した陶芸家 河井寛次郎で、以前も行った彼の作品、陶房、登り窯などのある「河井寛次郎記念館」(東山五条)。寛次郎は実用に即した陶芸作品をたくさん制作したことで知られますが、陶芸のほか、清水九兵衛と同じく彫刻作品も残されています。写真右の作品(撮影可)は寛次郎がとくに手掛けた「手」をモチーフにした木彫り彫刻。寛次郎の素朴で優しい人柄が感じられるものになっています。
コロナ対策の雇用調整助成金、10月から上限引き下げへ 2022.09.05
新型コロナのいわゆる「第7波」も先週からようやく感染者数の減少傾向になってきました。厚生労働省によると、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金を合わせて、支給決定件数は累計で700万件を超え(2021年8月26日現在)、支給決定額にいたっては6兆円超の金額となっています。2020年から始まった新型コロナの感染拡大で、労働者の雇用維持のためとはいえ、厚生労働省の雇用保険財源はひっ迫している状況下、8月31日に雇用調整助成金のコロナ対策による特例措置について、助成金の上限を引き下げる旨が公表されました。
これまでは、直近3か月の平均の売上高が前年・前々年または3年前同期比で30%以上減少した企業などへの助成金(1人当たり日額)が、現在15,000円から10-11月は12,000円。売上高の減少額が30%未満でも10%以上減少した場合には、現在9,000円から10-11月は8,355円に引き下げられます。12月以降の措置については、雇用情勢等により10月末までに発表されます。
また、雇用調整助成金の税務上の取扱いで特に注意すべきは「中小企業向け 賃上げ促進税制」があります。この「中小企業向け 賃上げ促進税制」について、(1) 「適用要件」の判定を行う際は国内雇用者に対する給与等支給額から雇用調整助成金は控除しません。一方、(2) 税額控除額の上限額となる「調整雇用者給与等支給増加額」は、給与等支給額から雇用調整助成金を控除した後の金額を前事業年度と適用事業年度で比較した増加額になります。したがって、給与等支給額が増加しても雇用調整助成金の増加の場合、税額控除を受けられないケースもあり得ますので、経済産業省『中小企業向け 賃上げ促進税制ご利用ガイドブック』により雇用調整助成金の取扱いについてよく押さえておく必要があります。
TKC、「e-TAXグループ通算」の提供を開始 2022.08.29
この令和4年4月1日以降の開始事業年度からスタートしたグループ通算制度。3月末決算法人については、通算法人(通算親法人との間に通算完全支配関係がある場合)でその前期実績基準額が10万円を超えるときは、当期から11月30日までに中間申告書の提出が必要です。連結納税制度からグループ通算制度に移行した通算法人の場合、仮決算による申告書を提出しない限り、『前事業年度の確定法人税額(適用初年度の場合、連結法人税個人帰属額)×1/2』を予定申告することになります。(週刊税務通信 No.3716(令和4年8月22日))
連結納税制度の期間中は連結法人には中間申告(予定申告)がありませんでしたので、久しぶりに地方税と同様、法人税も中間申告(予定申告)を行うことになります。また、TKCは8月19日からグループ通算制度に対応した「e-TAXグループ通算」(令和4年度グループ通算申告システム)の提供を開始しています。新しいシステムですが、基本的な処理の流れは、いままでの「eConsoliTax」(連結納税システム)と同様とのこと。中間申告にも対応できるよう、グループ通算制度に対応した法人税・地方税申告書の作成機能も搭載されます。
グループ全体を1納税単位として親法人が申告してきた連結納税制度から、通算制度では各通算法人が個別に申告等を行うことになります。ただ、通算法人の中で中小企業等に該当する法人があったとしても、「少額減価償却資産の損金算入の特例」の適用からは除外されます。連結納税制度のときもそうでしたが、この特例の不適用については継続しますので、会計処理や申告書作成時には留意が必要です。
来日5年を経過する外国人の方、税務上の取扱いに注意を 2022.08.22
日本の所得税の取扱い上、日本に居住する外国人の方はその居住形態によって、課税される対象の所得が大きく異なります。まず「非居住者」、「居住者」のどちらに該当するか、そして「居住者」に該当した場合でも「非永住者以外の居住者(永住者)」か「非永住者」を判定することが重要です。そのうち「非永住者」とは、『居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人』が要件になります。
一方、課税対象の範囲は、① 「非永住者以外の居住者」の方は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して(全世界課税方式)。② 「非永住者」の方は、(ア) 国外源泉所得以外の所得 (イ) 国外源泉所得で国内において支払われ又は国外から送金されたもの・・ですので、年の中途で5年経過し「非永住者」から「非永住者以外の居住者」になった場合、それ以降の期間(令和4年6月30日で5年経過のケース:令和4年7月1日~12月31日)は本国で生じた所得も含めて、日本での確定申告(翌年3月15日まで)が必要になると考えられます。
たとえば、外国人の方で本国に所有する不動産に賃貸収入等がある場合、「非永住者以外の居住者」となってからは、その賃貸収入等も含むすべての所得に対し、日本の税法に従って所得および税額を計算しなければいけません(賃貸収入等に課された外国の税金については、日本申告時に外国税額控除や必要経費に算入可)。ことし来日して通算5年間が経過する外国人の方については、このような税務上の取扱いを考慮し、本国で対象となる課税所得や日本での確定申告の有無などを確認することをおすすめします。