日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
今回の予定申告書、「6/前事業年度の月数=6/12」ではありません。 2020.11.14
今月11月は法人(3月末決算)の法人税・地方税の予定申告書の提出月でもあります。通常の予定納税額は「前事業年度の税額×6/12か月」で計算しますが、今回は2019年10月1日以後に開始する事業年度から適用される「(新)特別法人事業税」やそれに伴い廃止された「地方法人特別税」の経過措置ほかの関係から、地方税(法人都道府県民税法人税割、法人事業税、特別法人事業税、法人市町村民税)の予定納税額は、その6か月の代わりにそれぞれの数値(1.9、6.3、2.3、3.7)を乗じた金額が税額になっています。
ただ、予定申告書上では、従来と同様に「6/前事業年度の月数」と表示されているので、計算間違えでは・・と誤解される納税者の方がいるかもしれません。予定申告書・納付書と一緒に送られてくるお知らせ(説明書き)には、(小さくですが・・)「予定申告に係る経過措置」として記載されています。
2019年10月より適用された「特別法人事業税」は、「地方法人特別税」の後継として法人に課される国税とのことです。しかし、国税の1つにもかかわらず、都道府県が「法人事業税」とともに徴収することになっていて、廃止された「地方法人特別税」と同様、法人税額の計算では費用計上が認められます。いずれにしても税金については税目や税率の変更で複雑になるばかり。手書きによる対応は必要以上に時間や労力がいるので、やはり申告納税ソフトの有り難味を感じます。
新型コロナ消費税特例 2020.11.10
毎年、この時期に送られてくる冊子『税理士職業損害責任保険 事故事例』。2019年度(2019年7月1日~2020年6月30日)の保険事故の傾向は、前年度と比較し支払件数は21件減少しましたが、一方で支払保険金は増加し合計約22億5千万円で過去最高になったとのことです。税目別では消費税や法人税の割合が大きく、これは例年のことですが、事故原因では消費税は各種届出書の提出漏れ、法人税は所得拡大促進税制に関する誤り等が目立っています。
たとえば、大きな設備投資をすることがわかっていながら、前事業年度末まで「課税事業者選択届出書」や「簡易課税不適用届出書」を提出していなかったことにより、免税事業者や簡易課税事業者のままで設備投資にかかる消費税額の還付を受けられなかった事例などがあります。ただ、昨今のコロナ禍の中では当初予定していた設備投資ができなくなる場合も考えられます。
このようなケースは保険事故になる事例ではありませんが、「新型コロナ税特法」として、消費税の届出等に関して特例が設けられています。令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間の一定の期間について、事業収入が前年同時期と比べて概ね50%以上減少している事業者については、納税地の所轄税務署長の承認を受けることで、課税時期の開始後でも課税選択を変更することなどができることになっています。
固定資産税減免特例の適用、10月までの売上高の確認を 2020.11.02
令和3年度課税分の固定資産税等に限り、新型コロナウイルスの影響で、令和2年2月から同年10月までの間に連続する3か月間の売上高が、対前年同期比で50%以上減少した場合は「全額免除」、30%以上50%未満減少した場合は「2分の1に軽減」されます。まだ減免特例適用の可否を確認されていない中小事業者等は、あらためて2月から10月までの売上高の対前年同期比の確認が必要です。なお、感染防止対策のため自粛要請に応じた期間も含めることができます。
この減免特例の対象資産は、固定資産税の課税対象である土地・建物・償却資産のうち、事業用家屋(減価償却費が税法上の損金または必要経費に算入されたもの)および償却資産に限られます。(固定資産税を支払っているリース資産も対象)よくあるケースで、個人事業者で自宅の一部を事務所等に使用している家屋(特例対象家屋)の場合、その事業に供している割合(事業用割合)を乗じた減免率になり、その事業用割合がわかる書類(青色申告決算書、収支内訳書など)の提出がもとめられます。
減免特例の適用には、中小事業者等が税理士・会計士などの認定経営革新等支援機関等の申告書の確認(① 中小企業者等に該当するか ② 売上減少 ③ 特例対象家屋の居住用・事業用割合)および対象資産のある市町村等が定める様式の申告書を発行してもらう必要があり、令和3年1月中にその申告書に必要書類を添付して軽減の申告を行います。
『須田剋太展』 2020.10.26
先週末、三重県菰野町にあるパラミタミュージアムへ『須田剋太展』を観に行ってきました。須田剋太(写真の眼鏡をかけた方)は1905年生まれの日本の洋画家。とくにすでに故人になられた司馬遼太郎氏の紀行文集『街道をゆく』(週刊朝日)の取材旅行にほぼすべて同行し、その挿絵を担当したことで有名です。この美術館では、ことし須田氏の没後30年ということで、今月から11月29日まで、『街道をゆく』の挿絵原画33点を含む約100点の作品が展示されています。わたしは、後にこの紀行文集を書籍にした文庫本シリーズ(朝日文庫)をほとんど読んでいたので、当日は挿絵に使われた原画と対面できて感激ものでした。
作家 司馬遼太郎氏は滋賀を気に入られていたようで、『街道をゆく』の中では何回も滋賀県を訪れています。写真は「近江散歩」シリーズでの挿絵の原画で、淡い輪郭線で近江八幡にありそうな水郷の風景をうまく表現しています。(ちなみにこれら作品は撮影可能で、最近このような美術館がふえています)紀行文ではたびたび海外にも足をのばしていて、写真は「愛蘭土(アイルランド)紀行」シリーズの挿絵の原画でダブリン市街の様子。わたしもずいぶん前、ウェールズ(イギリス)の港町からフェリーでダブリンまで渡ったことがありますが、建物の遠景と石畳のコントラストは、この街の特徴をよくとらえていると感じました。
小規模企業共済の新規加入、10月29日までは掛金の事前振込が不要 2020.10.19
早いものでことしも10月に入り、2020年も残すところ2か月あまりになりました。毎年のことですが、この時期になると来年の確定申告(令和2年分)をすこしずつ意識します。そして、何か納税の対策が必要な事業者や法人役員の方には「小規模企業共済」の加入をご案内するようにしています。
「小規模企業共済」は、国の機関である中小機構が小規模事業の事業主や経営者を支援するための制度。支払った掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除(一括年払いで84万円まで可能)でき、一方で、共済金を将来の退職・廃業時に一括で受取った場合、退職所得として掛けた年数に応じて「退職所得控除」(20年以下:40万円×年数、20年超:800万円+70万円×(年数-20年))が適用され、一括受取りでなく分割で受け取った場合でも「公的年金等の雑所得」として扱われます。
この「小規模企業共済」の新規加入の際、従来年払いのケースでは、掛金の現金による事前振込が必要でしたが、ことしの場合10月29日までに申し込みすると、現金による事前振込が不要(口座引落しから始められる)になっています(TKC企業共済会)。また、10月30日以降でも例年どおり現金の事前振込さえすれば、12月中旬までは新規加入が可能ですので、一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。
消費税の課税期間、3か月か1か月への短縮が可能 2020.10.12
事業者は消費税については、その課税期間の終了の日の翌日から原則2か月以内(個人事業者は12月31日の属する課税期間は翌年3月31日まで)に消費税の確定申告書を提出し税金を納付しなければなりません。その課税期間とは、個人事業者は1月1日から12月31日までの1年間、法人については事業年度(3月末決算法人では、4月1日から3月31日まで)とされています。
ただ、特例として『消費税課税期間特例選択届出書』を提出することにより、3か月毎または1か月毎に短縮することができます。大きな設備投資を行ったことにより多額の消費税の還付が見込まれたり、輸出業を行う事業者で輸出免税により消費税の還付がある場合、中間申告の仮決算では計算した税額がマイナスでも還付を受けることができない(納税額0まで)ため、早期に還付を受けるため課税期間を短縮して、そのつど還付を受ける方法があります。
また、個人事業者でも、いまから来年の設備投資の有無がわからない場合が少なくありません。もし、令和2年中に特に届出せず、令和3年当初は消費税の免税事業者または簡易課税事業者であったとしても、設備投資する月の前月末以前に『消費税課税期間特例選択届出書』を提出(たとえば4月設備投資で、3月届出書を提出、4月より課税期間の特例適用)し、同じく『消費税課税事業者選択届出書』または『消費税簡易課税制度選択不適用届出書』を提出すれば、設備投資にかかる消費税の還付を受けることができます。ただし、特例の適用開始から2年間は、継続して3か月毎または1か月毎に消費税の確定申告および納付しなければならず、設備投資等の還付額に対して申告事務の負担増やその後の消費税の納付額と比較する必要があります。
大津市「小規模事業者応援給付金」、12月28日まで申請受付を延長 2020.10.02
新型コロナウイルス感染拡大の影響にともなう大津市「小規模事業者応援給付金」ついては、申請受付期間が令和2年12日28日まで延長されました。今回の申請受付期間の延長でも給付要件は変更されていませんので、給付申請も1事業者につき1回限りは変わらず、既に給付金を受給された方は申請の対象外になります。
しかし、すでに1回申請し受給された方でも、受給された額が30万円未満であれば、改めて9月以降の申請にかかる給付額が、既に受給された金額を上回る場合、その差額を受給できることになりました(特例給付措置)。現在、すでに給付金を受給された事業者で給付額が30万円未満の方には、(これはこれで、大津市にとって相当の事務負担と思われますが・・)市よりその旨を記載した『申請受付期間延長に伴う特例給付(差額給付)のご案内』が個別に届けられています。
したがって、未だ給付金を申請していない事業者も含めて、新型コロナウイルス感染症の影響による事業収入(売上額)の減少に関する要件については、申請受付が12月28日まで延長されましたので、① 直近1ヶ月では11月度までの事業収入 ② 直近3ヶ月では9~11月までの事業収入で判断し、あらためて給付額を算定する必要がでてきています。
国民健康保険税の減免について 2020.09.28
新型コロナウイルス感染症の影響により、国民健康保険税の納付が困難になった世帯に対し、国民健康保険税の減免が実施されています。減免の対象となる保険税は、令和2年2月1日~令和3年3月31日に納期限が設定されているもので、減免される要件は、① 収入の種類(事業、不動産、山林または給与収入)ごとに見た収入のいずれかの減少額が、前年のその収入の3割以上 ② 前年の所得の合計額が1,000万円以下 ③ 減少した種類の所得以外の前年の所得の合計額が400万円以下で、①~③すべてを満たすことが必要です。
減免額は主たる生計維持者の前年の合計所得金額により、減免割合は2割~全部(10割)になりますが、あくまで世帯ごとで考えるので、たとえば夫婦共働きの場合、この減免割合に「主たる生活維持者の減少した収入にかかる前年の所得額/その生活維持者および配偶者の前年の所得金額の合計額」を乗じることになり、その分減免額は小さくなります。
提出書類は、① 減免申請書 ② 令和2年分所得見積書 ③ 令和2年1月から申請時までの収入・所得が確認できる書類の写し。個人事業主のなかで、ことしの収入(持続化給付金などは含みません)について3割以上の減少が見込まれる方は、現在は令和2年の年間収入が未確定でも申請は可能(上記②「令和2年分所得見積書」に見込額を記載)ですので、いま納付されている保険税の負担軽減のためにも、早めに申請されるのがよいと思います。
東寺界隈を歩く 2020.09.23
連休中、京都駅近くにある東寺(教王護国寺)へ行ってきました。本来であればこの日は境内で弘法市が開かれるはずが、残念ながらコロナ禍のため中止に。ただ、金堂や講堂の建物の中は密教芸術の宝庫で、多くの美術品を鑑賞することができ、週末からは「東寺名宝展」も開催(11月25日まで)されています。そして、古都らしい風景として有名な東寺の五重塔ですが、ハスが茂った瓢箪池越しの遠目の風景もよく、また近くでそびえる姿も迫力があります。ちなみに高さ55㎡は五重塔として日本最大になります。
それから、東寺門前には鰻屋や東寺餅(薄皮こし餡の素朴な味)という和菓子を売っている店など、京都らしい商店が並んでいて、それらを眺めながらぶらぶらと大宮通を北へ。写真は歩いた先の七条大宮『笹屋伊織』にある弘法市前後3日間のみ販売する「どら焼」。この店は享保年間創業で、もとは東寺のお坊さんのおやつとして考えられたもの。もっちりした皮とほどよい甘さが特徴です。
雇用調整助成金、会計表示の方法もいろいろ 2020.09.14
新型コロナウイルス感染の影響から、最近は雇用調整助成金の受給を受けるケースが出てきています。雇用調整助成金は収益計上(消費税は課税対象外)が必要で、持続化給付金、家賃支援給付金などと同じ取扱いになります。
ただ、収益計上時期については「週刊 税務通信(No.3616) タックスフントウ『雇用調整助成金の法人税の取扱い』」にも解説されていて、一般の給付金等のような支払決定日ではなく「その給付の原因となる休業の事実があった日の属する事業年度の益金の額に算入する」で、決算処理時には各労働局から届く「支給決定通知書」の判定基礎期間に基づき、損失の額(実際に支給した休業手当の額等)と対応させ未収入金(見積額を含む)を計上します。所得拡大促進税制の適用にあたっては、休業手当は給与等に含めますが、この雇用調整助成金は控除しますので、こちらも注意が必要です。
雇用調整助成金の会計表示には、もともと休業手当とは別のものと考え、営業外収益(雑収入)や特別利益に計上するのが一般的ですが、国際会計基準(IFRS)では休業手当を補てんするものとして人件費と相殺表示する場合もあります。テーマパーク事業を運営する法人(日本基準)では、臨時休園期間中のテーマパーク事業で発生した固定費(人件費・減価償却費など)から雇用調整助成金を控除した金額を特別損失で計上した例もあり、従来から指針がなく表示方法にばらつきがあるようです。