税理士ブログ Blog

日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。

2023年12月

税理士に外形標準課税の計算機会が増えそうです 2023.12.17

11日に決定した2024年度(令和6年度)税制改正大綱20231214.pdf (nikkei.com)では、たびたび話題になっている個人向けの減税や企業に賃上げを促す税制のほか、都道府県が法人事業税の一部として企業に課す「外形標準課税」の対象を拡充し、課税を強化する方針(76ページ目)も盛り込まれています。具体的な課税標準については、現行の課税標準「資本金1億円超」から「資本金と資本剰余金の合計10億円超」に拡充し、202541日から開始する事業年度から適用されます。

そのほかに「100%子会社等への対応」の項目もあり、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人の100%子会社等のうち、「資本金が1億円以下」で「資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるもの」も外形標準課税の対象(202641日から開始する事業年度から適用)となっていて、こちらの「100%子会社等への対応」の課税標準の条件によって、外形標準課税の計算が必要になる税理士が増えてくるものと思われます。

従来外形標準課税の対象となるのは大企業に限られ、中小企業の税負担に配慮されていました。ところが、総務省の資料によると対象企業数が平成18年度の約3万社から、令和2年度には約2万社まで3分の1が減少したとのことです。その大きな原因は新型コロナウイルス等で業績が悪化した企業が、赤字でも課税される外形標準課税を節約するために資本金を減資するケースが増えたためですが、2023年度までに減資して課税対象外となった企業には追加基準を適用しない等、いろいろな配慮も設けられています。

財産債務調書、令和5年分から提出期限を「翌年6月30日」に延長 2023.12.10

令和4年度税制改正で財産債務調書制度が見直されています。この制度は、現行ではその年分の所得が2000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の有価証券等国外転出特例対象財産を有する場合には、財産の種類や数量、価額、債務の金額などを記載した調書を、その年の翌年の3月15日までに所轄税務署長に提出しなければならないというもの。ただ、所得2000万円以下の者は財産債務調書の提出義務者の範囲から外れるため、仮に高額の資産を保有していてもその年分の所得が低いもしくはゼロであれば、調書の提出義務はなく、資産の移動状況の把握が不十分になっていました。見直しでは、提出義務者に所得要件を設けずに、財産の価額の合計額が10億円以上の者を加えられ、令和5年分以後の財産債務調書について適用されます。

一方で、提出期限は緩和され、現行の提出期限であるその年の翌年の3月15日から「その年の翌年の6月30日」となっています。国外財産調書についても同様になります。また、財産債務調書への記載を運用上省略することができる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準を300万円未満(現行:100万円未満)に引き上げられ、これらの改正は令和5年分以後の財産債務調書、国外財産調書について適用されます。zaisan_leaflet.pdf (nta.go.jp)

また、「国外財産調書」とは、居住者(「非永住者」の方を除きます)の方で、その年の1231日おいて、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合、その財産の種類・数量および価額等を記載の提出を求められるもの。kaigaizaisan_tirashi.pdf (nta.go.jp)また、この「価額」はその年の1231日における「時価」または時価に準ずる「見積価額」となります。「邦貨換算」は1231日の「外国為替の売買相場」ですので、最近の円安により新たに提出条件に該当することも考えられます。令和5年1231日の為替換算により提出対象になる可能性のある方は、提出期限(令和6年6月30日)までに自身の国外財産の価額を確認が必要になります。

来日5年を経過する外国人の申告の有無と新しい扶養控除制度 2023.12.03

日本の所得税の取扱い上、日本に居住する外国人の方はその居住形態によって、課税される対象の所得が大きく異なります。まず「非居住者」、「居住者」のどちらに該当するか、そして「居住者」に該当した場合でも「非永住者以外の居住者(永住者)」か「非永住者」を判定することが重要です。そのうち「非永住者」とは、『居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人』が要件になります。No.2010 納税義務者となる個人|国税庁 (nta.go.jp)

一方、課税対象の範囲は、① 「非永住者以外の居住者」の方は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して(全世界課税方式)。② 「非永住者」の方は、() 国外源泉所得以外の所得 () 国外源泉所得で国内において支払われ又は国外から送金されたもの・・ですので、年の中途で5年経過し「非永住者」から「非永住者以外の居住者」になった場合、それ以降の期間(令和5年6月30日で5年経過のケース:令和5年71日~1231日)は本国で生じた所得も含めて、日本での確定申告(翌年315日まで)が必要になると考えられます。たとえば、外国人の方で本国に所有する不動産に賃貸収入などがある場合、「非永住者以外の居住者」となってからは、その賃貸収入等も含むすべての所得に対し、日本の税法に従って所得および税額を計算しなければいけません(賃貸収入等に課された外国の税金については、日本申告時に外国税額控除や必要経費に算入可)。

ことし来日して通算5年間が経過する外国人の方については、このような税務上の取扱いを考慮し、本国で対象となる課税所得や日本での確定申告の有無などを確認する必要がありますし、また令和5年分の確定申告からは扶養控除制度が変更され、国外に居住する親族(「非居住者親族」)である扶養控除等の適用対象者のうち30歳以上70歳未満の者は原則除外されていて注意が必要です。ただ、① 留学により国内に住所および居住を有しなくなった人 ② 障害者 ③ その居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人については、例外的に適用対象となっています。0022009-107_01.pdf (nta.go.jp)

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