日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
2025年5月
中小賃上げ促進税制、この決算期から繰越控除が可能に 2025.05.03
中小企業向け賃上げ税制は、従業員の給与を増加させた中小企業に対して税額控除を認める制度で、対象は資本金1億円以下の青色申告法人になります。この制度の基本的な仕組みは、雇用者給与等支給額が前期比で1.5%以上増加させた場合、その増加額(控除対象雇用者給与等支給増加額)に一定の税額控除率を乗じた金額を法人税額から控除できるというものです。控除率は原則15%ですが、上乗せ措置の適用により最大45%まで引き上げることも可能です。ただ、控除上限額は当期の(調整前)法人税額の20%までで、それを超える金額は控除の対象になりませんでした。(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin06gudebook.pdf)
そのような中、令和6年度税制改正で「繰越税額控除制度」が創設され、従来の制度では赤字や税額控除額が大きい法人でも、令和6年4月1日以後に開始する事業年度から「控除しきれない金額(税額控除限度超過額)」を最大5年間繰り越すことが可能になりました。たとえば、賃上げによる税額控除額が300万円あるにもかかわらず、当期の(調整前)法人税額が1,000万円の場合、従来は200万円の控除(1,000万円×20%)しか受けられませんでしたが、新制度では残りの100万円を5年間にわたって繰り越し、将来の法人税額から控除できます。
この「繰越税額控除制度」を適用するには、① 繰越控除をする事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額(前事業年度)の給与額を超えていること ② 所定の明細書を確定申告書に添付することが必要ですが、新制度により一時的に業績が悪化し赤字になったり、繰越欠損金がある法人などでも、従業員の賃上げによりメリットを将来にわたって享受できるようになります。従業員の新規採用や賃上げを実施したり、景気の影響を受けやすい中小企業にとっては、大きな支援制度といえます。