日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
2025年7月
海外赴任の方へは、労災「特別加入制度」の手続きを 2025.07.20
昨今の円安傾向で一時ほどではないにしろ、海外勤務のある企業は大企業にかかわらず、中小企業でもその機会は一定数あります。その場合の労災保険についてですが、海外での業務が「海外出張」として取り扱われる場合、国内での災害と同様に労災保険給付を受けることができます。一方、「海外赴任」とみなされる場合、海外赴任者として特別加入をしていなければ労災保険給付を受けることができません。というのも、労災保険法の適用については、法律の一般原則として属地主義がとられているため、海外の事業に「派遣」され、その事業に使用される場合には労災保険の対象とならないためです。
そのようなケースに備えて、労働者を海外に派遣する場合には「労災保険特別加入制度」があります。「労災保険特別加入制度」とは、海外に派遣された労働者が現地で労災に遭ったとき、日本の労災保険と同様の補償を受けるための制度です。海外に従業員を派遣する企業は、万が一現地で労働災害に遭った場合に備え、海外派遣日の前に加入手続きをすることをおすすめします。なお、その制度は前述の海外出張者や現地採用者は対象外になります。
「労災保険特別加入制度」の手続きは、国内事業者が特別加入予定者をまとめて「特別加入申請書」に記入し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長あてに提出することにより可能です。加入希望日の30日前から申請書を提出することができ、過去に遡って加入申請はできません。したがって、海外特別加入手続きについては、事前申請だということに注意が必要で、記入記載例は厚生労働省のHPから確認できます。海外での予期せぬ事故や病気は、医療費などが高額になることもありますので、労災保険への加入は、万が一の際の経済的な負担を軽減する上で非常に重要になります。