日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
繰越欠損金の期限切れ 2018.03.26
個人の確定申告期も過ぎ、今後は法人の決算期末が3月末に近づいています。在庫の実地棚卸や不動在庫や廃棄すべき固定資産が廃棄できているか、短期の前払費用の支出が決算期末までに実施されるかなどの確認が必要な時期になってきました。これらは法人税の問題ですが、そのほか相続税にも影響する事項として、決算期で繰越控除の期限切れになる青色欠損金の有無があります。具体的には(3月末決算法人で)平成21年3月期に発生した青色欠損金は、この決算期で課税所得から控除しきれない金額は翌期に繰越しできません。もし、法人役員が法人に対して貸付けがあり回収の見込みがない場合、思い切って「債権放棄」(法人から見れば、「債務免除」)するのも一つの方法と思われます。
この役員の貸付金は立派な個人の相続財産であり、たとえ当該法人の財務状態から回収が不可能と考えられても、貸付け相当額が相続財産評価額になります。役員個人は「債権放棄」により実質価値のない相続財産を圧縮でき、一方で法人は「債務免除」を受けることにより、「役員借入金(負債) × × / 債務免除益(特別利益) × × 」の会計処理を行いますが、この債務免除益は青色欠損金と相殺することにより法人税等の課税が発生しないことができます。ただし、法人税法上青色欠損金は9年間の繰越しまで、その後「債権放棄」を実施しても法人側は債務免除益に法人税等が課税されることになります。また、この債務免除益により当該法人の債務超過が解消される場合、株主の間で「みなし贈与」が認識され、当事者以外の株主に対し贈与税が課税される場合があるので注意が必要です。