日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
「賃上げ」と「賃上げ促進税制」 2023.04.10
最近の報道では「賃上げ」や「初任給の引上げ」を表明する企業が相次いでいて、これは上乗せ措置の適用により給与等支給増加額に対し最大30%(基本15%)の税額控除率となる「大企業向け賃上げ促進税制」も後押しているのは間違えありません。そして「賃上げ促進税制」は、中小企業向け(最大40%(基本15%))chinnagesokushin04gudebook.pdf (meti.go.jp)も含めて、その制度の内容で少なくとも令和6年3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。
ただ、中小企業は大企業ほど「賃上げ」に積極的でないとの報道もあります。そもそも中小企業の黒字企業割合は53.7%(2022年TKC経営指標より<黒字企業割合は53.7%(対前年比1.9ポイント増)>令和4年版「TKC経営指標(BAST)」を発行 ―全国354金融機関等で融資審査などに利用― | ニュースリリース | TKCグループ)で、税金を支払っていない赤字企業にとって、残念ながら「賃上げ促進税制」の恩恵を受けることはできません。また、黒字企業でも注意しないといけない点は、この制度には「控除上限」として「当期の法人税額の20%」は設けられていることです。前期以前からの繰越欠損金のため、「控除上限」により計算した税額控除限度額まで控除できず、あてが外れるケースもあり得ます。
従業員の方の給与をいったん上げてしまうと簡単に下げることは難しいですし、この制度は役員や親族に対する給与等は対象外です。また、給与額の他に社会保険料や退職時に発生する退職金の負担増についてもある程度考えておかなければいけません。「賃上げ」自体はたいへん歓迎すべきことですが、「賃上げ促進税制」を見越した「賃上げ」については慎重に判断する必要があると思われます。