日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
免税事業者、インボイス登録が必要ないケース 2023.07.10
6月27日付の日経新聞『(消費税の免税事業者)インボイス登録 1割のみ』の記事によると、インボイス制度の導入がことし10月開始にもかかわらず、現在のところ約500万の免税事業者のうち、インボイスを発行できるよう登録したのは1割程度とのこと。申請期限を23年3月末から9月末に延長し、またインボイス登録後3年間は納税額を売上時に受け取った消費税の2割とする経過措置(2割特例)2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁 (nta.go.jp)を設けたわりには、あまり進んでいないようにも見えます。ただ、登録は強制ではなくあくまで「任意」ですし、免税事業者のなかには以下のとおり、もともとインボイス登録が不要(登録しなくても不利が生じない)なケースがいつくかあります。
1つ目として、「顧客が個人の一般消費者のみ」のケースで、たとえば美容業や理容業を営む免税事業者などがそれにあたります。お客様から会社経費としての領収書を求められない限り消費税を差し引きするケースはなく、こちらからのインボイスの発行は不要になります。2つ目は、「顧客が簡易課税事業者か免税事業者が大半」のケースで、顧客側は消費税額の計算上消費税の控除の必要はないため、インボイス発行も求められません。ただ一方で、たえず顧客が簡易課税事業者か免税事業者であるか客観的に把握・確認する必要がでてきます。
最後として、「顧客との話し合いができている」ケースで、こちらが免税事業者のままでいても、従来の取引条件や価格(あるいは若干の値引き)で取引が継続することで了解を得られているのであれば、インボイス登録を行わない選択肢もあり得ます。ただ、インボイス登録を行わないとした場合、将来の事業に不利になってしまう事態も考えられます。事業は絶えず変化しますので、新規顧客や新しい業種に参入する場合でもインボイス登録がないことがデメリットになる可能性があります。もちろん、インボイス登録は23年10月以降でも可能ですが、これらのことを踏まえインボイス登録の可否を判断する必要があります。