日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
中小法人の実効税率が高い理由 2016.01.17
税制改正に伴い今年4月1日以降開始する事業年度から法人税の税率が従来23.9%から23.4%に引き下げられます。安倍晋三首相も、昨年来より法人実効税率(国と地方を合わせた法人税の法定税率)について、「2016年度の税率引き下げ幅を確実に上乗せし、税率を早期に20%台に引き下げる道筋をつけます」と表明しており、今後更なる税率の引き下げが予想されます。
滋賀県に本社がある中小法人の場合、実効税率は従来35.03%から34.48%に低下します。ただ、資本金が1億円超の大企業では、今年の4月1日以降の実効税率は約30%強で、資本金1億円以下の中小法人よりかなり低くなります。これは、一見法人税制が大企業優遇なのかと考えてしまいますが・・。
その理由は、大企業(資本金1億円超)では適用され、中小法人では適用されない法人事業税の一部の外形標準課税の影響があります。外形標準課税制度は、利益額に関係なく、その法人の資本金額・人件費・支払家賃・支払利息などに課税され、このような外形標準制度にかかる税金は実効税率の計算には含めません。この税制改正では法人税の税率の引き下げのほか、外形標準の割合も引き上げられており、これも実行税率を引き下げる大きな要因になっています。
これには実効税率は下げながらも、税収を確保したい政府の狙いが見えてきます。また、外形標準課税の拡大で従来課税できなかった赤字法人にも一定の課税ができることになり、更なる税収確保が期待されます。また、今回の税制改正では見送られましたが、その外形標準制度を資本金1億円超から引き下げ、適用対象を一部中小法人にも広げることを検討されていると言われています。外形標準課税の拡大は、政府は法人実効税率を下げながらも税収を確保するための便利な手段といえますが、法人にとっては税負担のほか、税率計算のための事務負担も増えてしまうことになってしまいます。