日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
所得拡大促進税制 2016.09.08
平成26年3月期より適用がはじまった「所得拡大促進税制」。おおまかに言いますと、雇用者給与等支給額を増加させた場合、増加額の10%を法人税から控除できるもので、平成27年4月1日より適用要件が一層緩和され、少々複雑な制度になりました。「所得拡大促進税制」には3つの適用要件があり:
要件①・・「雇用者給与等支給額」が、基準事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額より一定割合(増加促進割合)以上増加していること。たとえば、今月末の平成28年9月末決算法人の場合、適用事業年度の当該給与等の支給額が、平成25年9月末事業年度(基準事業年度)の支給額より3%(増加促進割合)以上増加している必要があります。
要件②・・「雇用者給与等支給額」が、前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額以上であること。上記要件①の例によりますと、平成27年9月末事業年度の支給額以上か確認することになります。
要件③・・適用年度の継続雇用者(下記(2)参照)一人あたりの平均給与が、前事業年度の継続雇用者一人あたりの平均給与を上回っていること。具体的には適用年度「平均給与等支給額=継続雇用者給与等支給額(分子)/事業年度の給与等月別支給対象者数の合計額(分母)」が前事業年度の「平均給与等支給額」より上回っているか確認しますが、特に要件③は判断する数値を算出するにあたり、いろいろ留意すべき事項があります。(以下参照)
(1)「事業年度の給与等月別支給対象者数の合計額(分母)」は月別支給対象者のため、たとえば従業員10名が事業年度通して従事した場合、10人×12か月=120人になりますが、給与等支給額に含まれている賞与は月数にはカウントしません。(2) 継続雇用者は適用年度及び前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者になります。適用年度に新たに採用された国内雇用者、前事業年度に退職した国内雇用者は除きます。(3) 65歳以上で雇用されている者は原則対象外になります。また、対象外となった時期で前述(2)に該当するか判断する必要があります。(4) 1週間の所定労働時間が20時間未満の者は原則対象外になるため、労働時間によって適用対象になる期間が断続的になることもあります・・などですが、いまのところ平成30年3月31日まで開始する事業年度に適用できる制度になっています。