日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
消費税の「軽減税率制度」 2018.04.28
先日25日は近畿税理士会草津支部の支部研修会に税理士の金井恵美子先生を講師にお迎えし、消費税の「軽減税率制度」のテーマでお話ししていただきました。みなさまもご存知のとおり、2019年10月より消費税率10%への引き上げにともない、軽減税率(8%)が導入されます。世界各国の消費税の標準税率(軽減税率(食料品))を見てみますと、ドイツ 19%(7%)、イギリス 20%(0~5%)、フランス 21.2%(5.5%)、中国 17%(13~17%)、韓国 10%(10%)となっており、各国で条件が異なるとはいえ、日本の標準税率 8%は世界でもかなり低い水準であることは確かなようです。金井恵美子先生は消費税をテーマにした研修講師や著書などで有名な先生ですが、まだ日本に「軽減税率」の実務自体が存在しない中、決定している条文や通達、国税庁Q&Aなどで50ページにわたるレジュメを作成し、流暢に講演するのには感心させられます。また、すでに軽減税率を導入している諸外国の裁判例など(外国の場合、標準税率と軽減税率の差が大きく争いになりやすいそうです)具体的に争われた事例が紹介され、理解しやすいように配慮されておられました。
この軽減税率の対象となるのは、① 飲食料品(食料表示法に規定する食品をいい、酒税法に規定する酒類を除く)の譲渡 ② 新聞(1週に2回以上発行する新聞に限る)の譲渡 ③ 飲食料品の輸入ですが、そのなかで特に留意すべきものは① 飲食料品の譲渡です。
飲食料品の譲渡でも、飲食料店等を営む者(外食事業者)が行う食事の提供は軽減税率の対象から除かれ、飲食料品を持帰りのための容器に入れ、又は包装を施して行う譲渡(ケータリング等)は含まれます。たとえば、フードコートがテーブルや椅子で食事することを前提に税抜価格500円の飲食料品を販売した場合は550円、一方持ち帰りを前提に販売した場合は540円となります。しかし、大手のファーストフードの加盟店はともかく、小規模な飲食店ではいちいち区別して価格を設定するかは疑問です。ただし、どちらも同額で販売したとしても、消費税額を計算で適用する税率はそれぞれ10%、8%に区分しなければいけません。
今回の税率引上げは2019年10月のため(前回(5%→8%)2014年4月1日)、多くの3月末決算法人にとって来期(2019年4月1日~2020年3月31日)の消費税申告は、標準税率が8%(消費税(国税)6.3%、地方消費税 1.7%)と10%(消費税(国税)7.8%、地方消費税 2.2%)、軽減税率8%(消費税(国税)6.24%、地方消費税 1.76% → 標準税率8%とは相違する)が混在することになります。税率引上げ日を含む事業年度の開始前までには、納税者へ「軽減税率制度」の周知が必要になってくると思われます。