日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
「損益分岐点」より「キャッシュフロー分岐点」 2018.10.01
関与先様と四半期や半期経過ごとに、必要に応じて現在実績および当期の業績見通しの検討を行います。業種によっては売上高と費用の額がちょうど等しくなる「損益分岐点売上高」を使用しますが、最近では借入金返済額も含めた資金収支がゼロになる「キャッシュフロー分岐点売上高」を意識しています。
「損益分岐点売上高」の算出方法は、「固定費 ÷ {1-(変動費 ÷ 売上高)}」。たとえば、A社のある月の売上高が1000万円、経費が900万円(変動費500万円、固定費400万円)だったケースでは、「損益分岐点売上高」=固定費400万円 ÷ {1-(変動費500万円 ÷ 売上高1000万円)}=800万円。つまり、A社は月額売上高が「損益分岐点売上高」800万円を上回ると損益上利益が生じる財務体質であることが判ります。
一方、「キャッシュフロー分岐点売上高」の算出方法は、「(固定費-固定費のうち、減価償却費+借入金返済額) ÷ {1-(変動費 ÷ 売上高)}」。さきほどのケースで、A社のある月の売上高が1000万円、経費が900万円(変動費500万円、固定費400万円(うち、減価償却費50万円))で借入金返済額150万円があったケースでは、「キャッシュフロー分岐点売上高」=(固定費400万円 - 減価償却費50万円 + 借入金返済額150万円) ÷ {1-(変動費500万円 ÷ 売上高1000万円)}=1000万円。
つまり、A社は月の売上高が「キャッシュフロー分岐点売上高」1000万円を上回らない限り、損益上利益が生じても借入金の返済資金が不足する可能性があります。(納税資金については計算が煩雑になるため考慮していません。)借入金で事業を行っている場合がほとんどの中小企業にとって「損益分岐点売上高」より、資金収支がゼロになる「キャッシュフロー分岐点売上高」の方が、はるかに重要度が高い指標であるといえます。