日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
2023年7月
外国人起業家のための「スタートアップビザ」 2023.07.31
起業を目指す外国人向けの主なルートには、経営・管理では「常勤職員2名以上か資本金500万円以上、事業所の確保」、大卒者のための起業向けの措置(最長2年間)では「指定された全国37校「スーパーグローバル大学」の採択校を卒業、大学が起業を支援」などの条件があり、それ以外でも優遇策として、2018年12月に経済産業省により『外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)』が創設されました。startup03_05.pdf (cao.go.jp)
日本で起業を希望する外国人の方が自治体へ「起業準備活動計画書」を提出し、自治体がその事業計画を審査して実現可能と判断した場合、「起業準備活動計画確認証明書」を交付し最長1年間の入国・在留を認める制度。現在のところ16自治体が参加していて、近畿の自治体では京都府申請案内-京都府外国人起業活動促進事業 – 京都海外ビジネスセンター (kyoto-obc.jp)、兵庫県、大阪市外国人起業促進支援窓口|外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ) の申請受付|大阪の中小企業支援機関。 大阪産業創造館(サンソウカン) (sansokan.jp)、神戸市があり、各自治体ではホームページで申請の受付けをしています。
一般的に、日本は諸外国と比較して外国人のスタートアップ育成で後れを取っているといわれます。日本の場合、在留資格認定の審査の厳しさや家族の就労制限などがネックで、在留資格の取得自体も利用しやすい制度にはなっていません。『スタートアップビザ』は、今のところ制度の存在があまり知られていない状況で、起業に至ったのは4年間で全国51例とのことですが、そのような制度を利用して意欲のある外国人の方が起業しやすい環境になってもらいたいものです。
「倒産防止共済制度」と税務メリット 2023.07.24
全国約62万の中小企業者等が加入する「中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)」は独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営し、加入者の取引先事業者の倒産に伴う連鎖倒産等を防止するための制度。もし、取引先の倒産があった場合、掛金の積立額の最大10倍(無担保・保証人不要)まで貸付けを受けることができ、それ以外にも掛金の積立額を担保に「一時貸付」(返済期間 1年、利率 現在0.9%)が利用できます。経営セーフティ共済|経営セーフティ共済(中小機構) (smrj.go.jp)
実際のところ、税務上は掛金の全額(月額 5,000円から200,000円まで)を支払日の属する事業年度に損金算入できる(1年分の前納も可能)ため、この税務メリットを活かすため加入するケースも多いです。ただ、加入するにあたり次の注意点もあります。① 倒産防止共済は解約した場合、経過期間に応じた割合でも解約金を受け取ることになり、加入から40ヶ月以上継続しないと100%の払い戻し率とはなりません。具体的には12ヶ月以上 80%、24ヶ月以上 85%、36ヶ月以上 95%と一定の目減り額が生じますが、それでも他の金融商品と比べて解約時の戻り率の高い商品と言えます。
② 掛金の累計額は最大800万円までに限定されています。③ 解約した場合の解約金は全額を益金算入しないといけないため、掛金の損金算入による税務メリットはあくまで税金の繰延(先送り)になります。④ 税務申告書や確定申告書には一定の明細書(法人:別表十(七))の添付が必要です。ただ、これらの注意点を踏まえても、「中小企業倒産防止共済制度」は、中小企業者等にとってうまく利用すれば経営安定化や資金繰りの有効な手段になり得ますので、いちど制度の内容をご確認されることをお勧めします。
旧居留地あたりを散策 2023.07.18
本当に暑かった3連休、わたしは所用があり朝からJRで神戸三宮へ。そして、定刻まで時間があったので、メインストリートのフラワーロードから明石町筋にかけ、すこし旧居留地エリアを散策してみました。このあたりは約150年前の神戸開港当時、外国人の居留地として西欧の街づくりが持ち込まれたため、整然とした街割りの風景や近代風建物がところどころ残っています。
写真はフラワーロードを海側に10分ほど行ったところにある東遊園地。開港当時は居留外国人専用の運動場として使用されていたため、西欧にある公園の面影がよく出ています。いまでは、芝生や木々のなかに個性的なオブジェ(彫刻)が点在する市民のオアシスのような場所。ちなみにこの像の人物は作曲家のモーツァルトで、没後200年を記念して全国の有志の方々で建設されたとのことで、この公園の緑によくマッチしていました。
それから街を歩いていると、明治時代に使われていたものを復元したガス灯やレトロ感が出ている白い木製の電話ボックス(神戸市立博物館前)など、ちょっとしたアクセントにも趣向が凝らされています。
旧居留地にはよく知られるカフェが点在しますが、写真はそのカフェのひとつでテラス席から道路や向かいのお店を眺めた風景。この日はすでに気温もかなり高くなっていましたが、このテラスはヨーロッパ風の造りで天井も高く浜風も入ってくるので暑さを感じません。わたしはエスプレッソ(左)とカプチーノ(右)のセットを注文しましたが、店内は意外とおひとり様客も多く、じっくり珈琲の味と雰囲気を楽しめる場所になっています。
免税事業者、インボイス登録が必要ないケース 2023.07.10
6月27日付の日経新聞『(消費税の免税事業者)インボイス登録 1割のみ』の記事によると、インボイス制度の導入がことし10月開始にもかかわらず、現在のところ約500万の免税事業者のうち、インボイスを発行できるよう登録したのは1割程度とのこと。申請期限を23年3月末から9月末に延長し、またインボイス登録後3年間は納税額を売上時に受け取った消費税の2割とする経過措置(2割特例)2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁 (nta.go.jp)を設けたわりには、あまり進んでいないようにも見えます。ただ、登録は強制ではなくあくまで「任意」ですし、免税事業者のなかには以下のとおり、もともとインボイス登録が不要(登録しなくても不利が生じない)なケースがいつくかあります。
1つ目として、「顧客が個人の一般消費者のみ」のケースで、たとえば美容業や理容業を営む免税事業者などがそれにあたります。お客様から会社経費としての領収書を求められない限り消費税を差し引きするケースはなく、こちらからのインボイスの発行は不要になります。2つ目は、「顧客が簡易課税事業者か免税事業者が大半」のケースで、顧客側は消費税額の計算上消費税の控除の必要はないため、インボイス発行も求められません。ただ一方で、たえず顧客が簡易課税事業者か免税事業者であるか客観的に把握・確認する必要がでてきます。
最後として、「顧客との話し合いができている」ケースで、こちらが免税事業者のままでいても、従来の取引条件や価格(あるいは若干の値引き)で取引が継続することで了解を得られているのであれば、インボイス登録を行わない選択肢もあり得ます。ただ、インボイス登録を行わないとした場合、将来の事業に不利になってしまう事態も考えられます。事業は絶えず変化しますので、新規顧客や新しい業種に参入する場合でもインボイス登録がないことがデメリットになる可能性があります。もちろん、インボイス登録は23年10月以降でも可能ですが、これらのことを踏まえインボイス登録の可否を判断する必要があります。
宇治寺のアジサイ、ハスの花 2023.07.03
梅雨の本番で時より強い雨が降る週末、京滋バイパスですぐの宇治界隈を散策。まずは奈良時代に創建された古寺で、西国三十三所観音十番札所の「三室戸寺」へ。この寺は宇治市中心からすこし離れた宇治川の北に連なる明星山の中腹にあり、山門から参道を歩いて約60段の石段を登ると、たくさんのハスが楽しめる「蓮園」がある本堂に辿り着きます。ここでは、大賀ハスや古代バスなどめずらしい類のハスがあり、これから8月上旬にかけ見頃を迎えます。
また、山門横の約5,000坪の広大な庭園には約10,000株のアジサイが植えられていて、この三室戸寺は「アジサイ寺」としても有名。アジサイの見るのはこのように雨の日でとくに朝方に行くのがいいそうで、わたしが行った日は時期的にはすこし見頃を過ぎていましたが、お寺の方が言うには、朝の早い時間帯は花がしっかり上を向いているので、日光が強くなる日中に訪れるよりおすすめとのことです。
その後、昨日からの雨で水かさの増した宇治川にかかる宇治橋をわたって「平等院」へ。有名な鳳凰堂は2014年に修復されたため、さほど古さを感じませんが、10円玉の図柄でもある建物はとてもバランスのよい造りをしていると感じました。そして、この境内には「平等院蓮(びょうどういんばす)」と呼ばれているハスが植えられている鉢がところどころに置いてあり、これは1999年に平等院阿字池の発掘調査で江戸時代の地層から種が発見されたとのこと。こちらのハスもこれから8月上旬まで見頃になるそうです。