日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
役員給与の減額にもハードルが 2020.04.13
会社の業績が予想以上に悪化したため、毎月の支給額が同額であった役員給与(定期同額給与)の減額を検討されている方もいるかもしれません。業績の低下により法人の損失額は増え、一方で個人の役員給与には所得税等が課されます。ましてや、令和2年分からは給与所得控除額が引き下げられ(給与収入 850万円超:195万円上限、ただし子育て・介護世帯を除く)、高額給与者の税負担がさらに大きくなっています。役員給与の改定は、定時株主総会が行われる等、事業年度開始の日から3か月以内に行うことができ、一度決定すると原則事業年度の終わりまで一定額を支払わなければなりません。したがって、3月末に事業年度が終了する法人は、今月4月から役員給与の減額が可能です。
しかし、事業年度が途中である法人は、役員給与を減額した金額(たとえば、月100万円から月80万円に減額する場合、これまでの100万円のうち20万円部分)は法人税等の計算するうえで経費になりません。しかし、個人には100万円全額に対し所得税等が課税されます。ただ、次の①又は②に該当する場合には、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」として、期中でも役員給与の減額が認められています。① 財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕している状況 ② 経営状況の悪化に伴い第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与を減額せざるを得ない事業が生じている状況 → ②は中小企業では、取引銀行との間で行われる借入金返済計画の変更の協議において、役員給与の額を減額せざるを得ないケースがほとんどです。
したがって、業績や財務状況、資金繰りの悪化といった事実が生じても、利益調整のみを目的とした場合、単に業績目標に達しなかったことによる減額改定は、上記の「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」に該当しませんので注意が必要です。