日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
100%子会社からの配当、源泉徴収ナシへ 2022.03.14
消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が始まる2023年10月1日から、別の制度見直しとして、内国法人が受取る「完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に該当する株式等」と「発行済株式等の3分の1超を保有する株式等」に係る配当等については、所得税の源泉徴収を行わないことになるそうです。たとえば、親会社が100%子会社より1,000,000円の配当を受取る場合、源泉徴収税率20.42%の204,200円の控除した795,800円の支払いを受け、100%子会社は204,200円を源泉所得税として国に納付します。これが2023年10月1日以後、親会社が100%子会社より配当金1,000,000円を受取るのみで済みます。
現在の制度では、親会社が100%子会社(完全子法人)の配当等(1,000,000円-204,200円=795,800円)を受取った場合でも、その配当等には法人税や地方税は課されません(配当等の全額が益金不算入)。一方、子会社が支払う配当等には源泉徴収義務(20.42%)が生じたままです。つまり、親会社としては課税されない配当等(1,000,000円)に対して、源泉所得税として税金(204,200円)を前払している状態になっています。
わたしも毎年このケースで申告書を作成するにあたり、あまり意識していませんでしたが、会計検査院の調査したところ、2017~19年度にのべ888社で還付加算金(納め過ぎた税金に対して、日数に応じて加算される金額。利息のようなもの)が生じていて、その金額は約3億6500万円にのぼったそうです。今回は税金のむだ遣いや事務の効率化などからの改正ですが、現行制度にも思わぬ盲点があると認識させられる見直しでした。