日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
連休明け、溜まったメールに注意 2022.05.09
ゴールデン・ウイーク明けに溜まったメールを開く際、不審なメールがないかよく注意する必要があります。とくに、2022年4月からマルウェア「エモテット(Emotet)」の感染が急速に拡大していて、「JPCERT/CC」(日本のコンピューター・セキュリティ情報を収集し、関連情報の発信などを行う一般社団法人)は、あらためて警戒するよう呼びかけています。エモテットは知人や取引先等を装ったメールに添付されていて、添付ファイルを実行しエモテットに感染すると、パソコンに保存されている情報やメールが盗まれる可能性があります。
不審なメール(マルウェア「エモテット」付メール)の事例から、① 添付ファイルとして、zipファイルが添付されていないか ② メール本文に「添付ファイル名」と「解凍パスワード」が記載されていないかを確認し、このような不審メールを受信した場合は添付ファイルを開封せず削除してください。あやまって添付ファイルを開封した場合には、「JPCERT/CC」から提供されている「エモテット」に感染しているかどうかチェックするツール(EmoCheckをダウンロード)を実行します。結果「Emotetは検知しませんでした」と表示されると感染されなかったことが確認できますので、添付ファイルを開封してしまった場合には利用することができます。
東京千駄ヶ谷の富士塚 2022.05.02
ゴールデンウイークの前半、ぶらっと日帰りで東京へ散策しに行ってきました。まずは2007年に開業した東京メトロ 六本木駅ちかくにある東京ミッドタウンへ。ここは広大な敷地に、約130のレストラン、ショップのほか、文化施設、オフィス、住居まである緑に囲まれた複合施設になっています。
わたしはこのうちサントリー美術館で現在開催している「大英博物館 北斎」で、浮世絵師・葛飾北斎のたくさんの作品を鑑賞。写真(左)は有名すぎる「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(SNS用に撮影が可能)。展覧会では版画のほか、多くの肉筆画も展示されていて、このように版画と比較してみると、浮世絵版画は北斎のような絵師だけでなく、彫師、摺師の職人技の合作であることがよく理解できます。ちなみに写真(右)は行きの新幹線の車窓から撮った富士山の様子。この日は前日の雨もすっかり上がり良い天気で、雪を頂いた本物の富士も眺めることができました。
そのあと、午後からは都営地下鉄 国立競技場駅へ移動し、千駄ヶ谷にある鳩森(はとのもり)八幡神社に参拝。隣には将棋会館もあり、勝ち運を祈願してお参りするプロ棋士の方も多いとか。境内の一角には高さ6mの江戸時代に造られた富士塚があり、参拝者は自由に登ることができます。富士塚とは富士信仰に基づき富士山に模して造られた人口の塚か山で、鳩森八幡神社の富士塚は現存都内最古のもの。1-2分で簡単に登ることができますが、山頂には実際に富士山から運ばれた溶岩で囲まれた浅間大社奥宮のミニチュアまであります。当時はこのように富士塚を登ることによって、富士登山と同じようなご利益を得ようとした気持ちがよくわかります。
滋賀県「交通税」、「琵琶湖森林づくり県民税」 2022.04.25
4月20日、滋賀県が導入を検討している「地域公共交通を支える税制」(交通税)について、滋賀県税制審議会から個人県民税などの既存税に上乗せする「超過課税方式」で基本的に検討すべきと答申されました。滋賀県では人口減やコロナ禍の影響を受けている地方鉄道や路線バスについて、その維持や利便性向上へ新たな財源確保の必要に迫られていることによるもので、導入されれば全国初とのことです。
滋賀県のこのようは「超過課税方式」による税金は「交通税」が初めてでなく、すでに「琵琶湖森林づくり県民税」が平成18年度から設けられています。税金の目的は長いですが、要約すると「琵琶湖森林づくり条例により、環境重視および県民協働による森林づくりを推進する事業を展開する費用に充てるため」とあります。税額については個人 年800円(県民税均等割 2,300円の一部)・法人 年2,200円~88,000円(現行の法人県民税均等割の額の11%)になっていますが、滋賀県にお住まいの個人で、実際このような税金を毎年負担していると認識されている方は少ないのではないでしょうか。
もちろん、これは滋賀県に限ったことではありません。国の総務省のホームページでは税率の課税自主権にあたる「超過課税」の実施状況等(令和2年4月1日現在)が公開されていて、47都道府県のうち滋賀県の「琵琶湖森林づくり県民税」ように個人均等割で実施している団体は37団体、法人均等割では35団体にのぼります。現在はどの自治体も財政難の中、今後このような形態での新たな税負担が増えるのではないかと予想されます。
確定申告の所得税・消費税、振替納税日前に残高の確認を 2022.04.18
個人事業者で振替納税を選択されている納税者の方、今週から振替日(所得税および復興特別所得税 4月21日(木)・消費税および地方消費税 4月26日(火))が到来しますので、指定口座に残高不足が生じないかのご確認をお願いします。残高不足が生じていると、金融機関または所轄税務署の窓口で直接納税することになり、さかのぼって確定申告期日の翌日(所得税等 令和4年3月16日・消費税等 令和4年4月1日)から完納の日までの期間で計算した金額の延滞税(最初の2か月を経過する日まで:年2.5%の割合)を納める必要も出てきます。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により簡易な方法で申告期限・納付の延長をされている納税者の方については、前にもご案内したとおり、所得税および復興特別所得税は5月31日(火)、消費税および地方消費税は5月26日(木)になります。ただ、これはあくまで先週4月15日(金)までに申告・納付期間の延長申請をされた方に限ります。昨年(令和2年分)の確定申告時のように、一律での申告期限および振替納税日の期限延長および延期ではありませんのでご注意ください。
「IT導入補助金2022」、1次公募期間がスタート 2022.04.11
2022年「IT導入補助金」(正式名称:サービス等生産性向上IT導入支援事業)の1次公募が先月3月31日(木)開始しました。「IT導入補助金」とは、中小企業や個人事業者が生産性の向上を目的としてITツールを導入する場合、その経費の一部を国が補助するものです。中小企業はこの補助金を活用することで、業務の効率化や売上高アップなどの経営力向上を図ることができます。
昨年2021年「IT導入補助金」では新型コロナウイルス対策が主な目的でしたが、今回の2022年は消費税のインボイス制度導入を見据えた企業取引のデジタル化の推進に重点が置かれており、従来の「通常枠(A類型・B類型)」のほか、新たに「デジタル化基盤導入枠」が創設されています。そのうち「デジタル化基盤導入類型」では、補助額が最大350万円・補助率が最大3/4まで引き上げられ、補助対象経費はクラウド利用料が最大2年分(従来1年分)やハードウェア購入費まで広げられました。
「デジタル化基盤導入類型」の公募期間は2022年4月20日(水)17:00まで、交付決定は2022年5月16日(木)の予定ですが、2022年中に順次2次から4次まで公募される見込みです。注意点としては、先にITツールを契約・導入して交付申請する、いわゆる「遡及申請」は認められませんので、交付決定が出るまで契約・納品・支払いは行えません。また、交付申請を検討される中小企業等については、まず「GビズIDプライム」のアカウントIDの取得が必要です。このアカウントは、申請手続から発行まで時間がかかります。交付申請を予定されている事業者の方は、早めに取得いただくようお願いします。
ブルーボトルコーヒー 2022.04.04
新年度を迎え気候も穏やかになった週末、神戸の元町近辺を散策していました。JR東海道本線を使って滋賀県より4府県を通過して行くことになりますが、手前の三宮駅までは新快速一本で行けるので便利な旅行です。いま関西のどこの桜も見ごろで、写真はJR元町駅から山側へ徒歩で5分ぐらいのところにある「兵庫県公館」庭の満開の桜。バックの兵庫県公館本館の建物は、1902年(明治35年)に建てられたルネサンス様式の外観を持つ近代建築で、もとは兵庫県の県庁本庁舎として建てられたもの。気軽に門をくぐって敷地内に入ることができるので、重厚で落ち着いた建物と満開になった桜とのコントラストを楽しむことができます。
その後、旧居留地あたりで買い物していた際に気付いたのが、店先に置かれた個性的な「ブルーボトルコーヒー」のロゴ看板。なかに入ってみると店内は天井を高く、空間を広々と贅沢に使い、かつシンプルで開放感のある雰囲気のカフェでした。このコーヒーチェーンは、本社はカリフォルニアで2015年から現在まで日本国内で24店舗を展開、いまではコーヒーのサード・ウェーブの代表格(ファースト・ウェーブは1960年代のインスタントコーヒー、セカンド・ウェーブはスターバックスなどのシアトル系)になっていて、「コーヒー界のアップル」とまでいわれているそうです。この日は週末にもかかわらず運よく席が空いていて、オーダーの都度で淹れてくれるコーヒーはやはり美味しく、またスタッフの接客も行き届いているので、なかなか居心地のよい場所でした。
通算法人、4月30日まで「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」の提出を 2022.03.28
この4月1日以後に開始する事業年度から連結納税制度はグループ通算制度へ移行します。(4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに、親会社が「グループ通算制度へ移行しない旨の届出書」を提出している場合を除く)そして、グループ通算制度の適用法人になった場合、通算親法人だけでなく通算子法人も法人税および地方法人税の申告にあたり、電子申告義務化の対象になります。(消費税等および地方税については、従来どおり資本金等が1億円を超える法人のみ。)
もし、現在までに連結納税制度を適用している事業年度において特定法人に該当しておらず、「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」の提出がないのであれば、従来からe-Taxによる申告を行っていても、通算制度の適用を受けようとする最初の事業年度開始の日から1か月以内(3月末決算法人であれば、2022年4月30日まで)に「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を提出する必要があります。
ちなみに、提出時期は2022年4月1日から開始のため、未だ3月中の提出は原則として受理されません。また、現状「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」の様式はグループ通算制度には対応していませんが、特に資本金等の額が1億円以下の法人については、来月30日までに「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を提出しなければならないケースが多いと思いますので、事前に準備しておく必要があります。
簡易な方法での申告期限・納付の延長、振替納税日は5月31日(火)に 2022.03.21
令和3年分確定申告の納付・申告期限の3月15日(火)が過ぎましたが、所得税および復興特別所得税以外の消費税等の納付・申告期限については3月31日(木)までになっています。なお、振替納税を利用される納税者の方は、令和3年分確定申告では所得税等 4月21日(木)、消費税等 4月26日(火)です。不動産譲渡などで例年より多額の納税額のある方などは、対象となる金融機関口座の残高にご注意ください。
先月国税庁より「新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方は、簡易な方法により令和4年4月15日(金)まで申告・納付期間の延長を申請が可能」と発表されました。当初、この制度での振替納税を利用されている方への振替日は未定でしたが、国税庁より3月16日付で「振替日は4月15日(金)までに申告された方について、所得税等 令和4年5月31日(火)、消費税等 令和4年5月26日(木)」と追加でお知らせされています。
また従来から、事業の継続や生活の維持を困難にする恐れがあるなどの理由により、所得税等や消費税等など国税を期限内に納付できない場合、税務署に申請することにより納税が猶予される制度もあります。申請のための書類として「換価の猶予申請書」または「納税の猶予申請書」、「財産収支状況書」等を提出することで、原則1年以内の猶予期間中に各月分割して納付(納付するまでの日数に応じて延滞税がかかります)できる可能性があるので、早めに所轄の税務署の徴収担当へ相談するとよいでしょう。
100%子会社からの配当、源泉徴収ナシへ 2022.03.14
消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が始まる2023年10月1日から、別の制度見直しとして、内国法人が受取る「完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に該当する株式等」と「発行済株式等の3分の1超を保有する株式等」に係る配当等については、所得税の源泉徴収を行わないことになるそうです。たとえば、親会社が100%子会社より1,000,000円の配当を受取る場合、源泉徴収税率20.42%の204,200円の控除した795,800円の支払いを受け、100%子会社は204,200円を源泉所得税として国に納付します。これが2023年10月1日以後、親会社が100%子会社より配当金1,000,000円を受取るのみで済みます。
現在の制度では、親会社が100%子会社(完全子法人)の配当等(1,000,000円-204,200円=795,800円)を受取った場合でも、その配当等には法人税や地方税は課されません(配当等の全額が益金不算入)。一方、子会社が支払う配当等には源泉徴収義務(20.42%)が生じたままです。つまり、親会社としては課税されない配当等(1,000,000円)に対して、源泉所得税として税金(204,200円)を前払している状態になっています。
わたしも毎年このケースで申告書を作成するにあたり、あまり意識していませんでしたが、会計検査院の調査したところ、2017~19年度にのべ888社で還付加算金(納め過ぎた税金に対して、日数に応じて加算される金額。利息のようなもの)が生じていて、その金額は約3億6500万円にのぼったそうです。今回は税金のむだ遣いや事務の効率化などからの改正ですが、現行制度にも思わぬ盲点があると認識させられる見直しでした。
雇調金の特例措置等、6月まで延長 2022.03.07
先月の25日、厚生労働省より雇用調整助成金(雇調金)の特例措置について、当初の3月末から6月末までに延長されると発表されました。雇用調整助成金のうち特例措置等とは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者が、従業員の雇用維持を図るため、休業手当などの一部を助成する助成金のことで、まん延防止措置等の延長で厳しい経営状態が続く事業者にとって、この助成金は雇用維持に貴重な資金になっています。
雇用調整助成金の特例については、一部の企業を対象に従業員一人当たりの日額は引き下げられる決定がされていて、2022年6月まで適用する予定の場合、2月からは13,500円から11,000円へ、3月からは9,000円へ引き下げられます。(原則的な特例措置)ただ、まん延防止等重点措置を実施している地域で知事の営業時短要請に応じた事業主(地域特例)や直近3か月の平均売上が30%以上減少(業況特例)については、日額は引上げられず当初の15,000円のままになります。
前回ご紹介した「賃上げ促進税制」(2022年4月1日から開始する事業年度より適用)の控除額の計算では、雇調金の支給を受けた法人は、その雇調金の金額を含めて(控除せずに)適用要件の判定を行うことになります。(『週刊 税務通信』No.3693)ただ、「賃上げ促進税制」(中小企業等を除く)は計算過程において「継続雇用者」に対する給与のみが適用要件の判定対象になるので、雇調金のなかでも「継続雇用者に係る雇調金」のみを算定しておく必要がでてきます。