税理士ブログ Blog

日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。

中小企業向け「賃上げ促進税制」、5年間の繰越しが可能に 2024.03.17

連合が先週発表した賃上げ要求の平均は5.85%、30年ぶりの5%超えで昨年の4.49%を大幅に上回ったとのこと。今後、われわれ税理士が関与する中小企業の回答や雇用労働者の約4割を占める非正規雇用労働者の賃金についてもどうなるかですが、政府も中小企業向け「賃上げ促進税制」を強化して、賃上げに取り組む企業・個人事業主を税制から支援しようとしています。chinnagesokushinzeisei2024.pdf (meti.go.jp)

「賃上げ促進税制」とは、企業が従業員(役員、親族などは除く)の給与を増やせば、法人税から一定額を差し引ける仕組みのこと。令和6年4月1日からの間に開始する各事業年度(令和9年3月31日まで:個人事業主は、令和7年から令和9年までの各年が対象)については、青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業協同組合等)又は従業員数1,000人以下の個人事業主を対象に、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%(改正前 40%)を税額控除されることになりました。

中小企業のなかでこれまで制度を利用できなかった赤字企業に対しても賃上げを後押しするため、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しが可能となり、翌期以降の税額から控除できるようにします。ただ、中小企業の控除額の繰越については、5年間の繰越控除の適用年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超えている必要があり、また将来黒字化した時に控除を受けたいという意思表示のため、申告書に一定の書類(別表六(二十六)、繰越税額控除限度超過額の明細書)の添付が必要になります。

完全親会社への配当等、支払調書の提出は不要です 2024.03.10

令和5101日以後に支払を受けるべき配当等で「完全子法人株式等」及び「発行済株式等の1/3超を有する株式等のうち、自己の名義をもって有するもの」(内国法人に限る)に係る配当等については源泉徴収が不要となりました。これは以前にもお話した会計検査院の指摘(201719年度にのべ888社で約36500万円の還付加算金が生じていた)や源泉徴収事務の効率化などに基づく改正です。0023004-040.pdf (nta.go.jp)

一方で『配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書』という法定調書の1つがあり、配当を行う法人が株の配当金や利益剰余金の分配、配当を実施した場合、これらを受け取る対象ごとに「配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書」を作成し所轄税務署へ提出(原則13万円超、支払確定日または支払日から1ヶ月以内)します。また、配当金や剰余金等を受け取る方へそれぞれ同支払調書を交付します。F1-9 配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書(同合計表)|国税庁 (nta.go.jp)

しかし、税務署へ尋ねたところ、源泉徴収を要しない完全子会社法人株式等に該当する株式等に係る配当等については、配当等の支払調書の提出は要しないとのことです。また、所得税徴収高計算書(納付書)についても配当の支払が完全親会社等にのみである場合、給与の支払いときのような支払額を記載して税額をゼロと記載することはなく、納付書自体提出することは不要です。

オペラ・ハウスとメゾン マルゥ 2024.02.11

先週は所用でベトナムのホーチミンへ行っておりました。約4年半ぶりのホーチミンでしたが、あいかわらず道路はバイクであふれ、街中は若者がおおぜいいて、多くのビルが建設中で活気に満ちていました。今回スケジュールに観光の時間はなかったですが、写真右は宿泊ホテルの向かいに建ち、行き帰りによく眺めていた「市民劇場(オペラ・ハウス)」玄関入口の外観の様子。フランス統治下の1898年に建てられ、現在の姿は建設当時の意匠を忠実に再現したものだそうです。普段は入場できませんが、定期的に伝統芸能の公演も行われていて、ヨーロッパ風彫刻とベトナム国旗のコントラストがアンバランスで、それもベトナムらしさを感じられます。

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最終日には朝食を早めに済ませ、足早にホテルから徒歩5分のところのチョコレート・ブランド「メゾン マルゥ」の店へ。ここはフランス人2人が2011年に創業し、良質なベトナム産カカオを厳選し製造していて、カカオの含有比率ごとにチョコレートのパッケージの色が異なっている工夫が凝らされています。店内にはカフェも併設されているので、手軽にベトナム・コーヒーを楽しむこともできます。IMG_0873IMG_0876

インボイス制度で課税事業者なられた方、振替納税の利用に注意 2024.02.03

昨年10 月から消費税のインボイス制度が開始され、インボイス発行事業者の登録をさ れた方は、令和5年分確定申告で課税事業者となり、はじめての消費税の申告をされる方も多いと思います。 そのなかで、「2割特例」については、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者の方が 適用でき、売上金額を集計すれば、手軽に納税額が計算できる仕組みで、本則課税、簡易課税のどちらを選択している場合も、事前の届出なしに、「2割特例」の 適用を受ける旨を申告書に付記することで適用できます。2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁 (nta.go.jp)

一方で、基準期間(2年前)の課税売上高が1千万円を超えた場合などは、インボイス発行事業者の登録と関係なく課税事業者となり「2割特例」の適用はできません。ただ、「2割特例」を適用できなくなった場合でも、「消費税簡易課税 制度選択届出書」を適用を受けたい課税期間の末日までに提出することで、簡易課税制度を選択 することができる特例(原則的な「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の 前日)が設けられています。

すでに申告所得税の振替納税を利用されている方でも、あらたに消費税で振替納税を利用される場合、再度消費税のための「預貯金口座振替依頼書」の提出が必要ですので、ご注意ください。振替納税制度を利用するには、確定申告の申告期限(消費税の場合、令和5年分は令和6年4月1日)までに、「預貯金口座振替依頼書」を提出しますが、提出先は納税地を所轄する税務署か、希望する預貯金口座の金融機関になります。依頼書を直接提出する他、e-Taxによる提出も可能ですが、e-Taxでの提出に対応していない金融機関や口座もあるため確認が必要です。主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日|国税庁 (nta.go.jp)

 

河井寛次郎記念館 2024.01.28

今朝のNHKテレビで大正から昭和にかけての陶芸家 河井寛次郎と彼の生前の工房兼住居で彼の作品が展示されている「河井寛次郎記念館」が紹介されていました。この記念館は京都の東山五条の近くにあり、わたしも京都に用事があった際にはときどき訪ねている場所。テレビ画面を通してなじみの風景を見ていると、また行きたくなり久々に訪ねることに。記念館は清水寺などの観光地からすこし離れた細い南北の通りに面して、寛次郎自ら設計した建物は外部からみると一見古民家のような雰囲気があります。IMG_0835IMG_0828

ただ、記念館に入ってみると建物中央部は1階・2階をつなぐ吹き抜け(写真左)になっていて、その吹き抜けを中心に廊下や部屋があり、ぐるりと一周できる古民家らしくない構造になっています。また、これは番組内で紹介されていましたが、床の張り方が日本では珍しい「朝鮮張り(ちょうせんばり)」いう独自のもの(写真右)。嵌め込まれている床板の幅がまちまちでも見栄えのよい床面になるよう工夫されて、この辺は寛次郎の個性が表れています。IMG_0821IMG_0815

記念館には彼の作品が多く展示されていて、一輪挿しの花瓶や硯など普段使いできそうな作品もあり、奥には陶芸が制作された大きな登り窯が保存されています。この日は、いつもに増して寛次郎ファンの来館者が多かったですが、落ち着いた雰囲気は変わりなく、いつも通りゆったり過ごすことのできる空間でした。IMG_0814IMG_0829

能登半島地震で石川県・富山県以外の納税者が申告・納付等の期限延長を受けるケース 2024.01.21

国税庁は1月9日に令和6年能登半島地震の被害状況を受け、石川県および富山県に納税地がある方については、国税に関する申告・申請・請求・届出等の期限を延長することになりました。(地域指定)これは、令和6年1月1日以降に到来する国税の申告・納付等の期限について、すべての税目について手続きなしで自動的に延長されることとなり、延長の期日については被災者の状況に十分配慮しつつ、後日国税庁ホームページで公表されるとのことです。02.pdf (nta.go.jp)

石川県・富山県以外の納税地がある方でも、被災の影響で申告等ができない場合には、所轄税務署長に対して申請することで申告等の期限延長を受けることができます。(個別指定)申請に関しては、当初の期限を経過しても状況が落ち着いた後に申告・納付等を同時に行うことも可能で、延長期日は災害その他やむを得ない理由がやんだ日から2月以内になっています。

他の都道府県に影響が起こりうる事例として「通算法人における災害等による確定申告書の提出期限の延長制度」があります。グループ通算制度を採用している企業グループのうち、通算法人に対して、「災害等による確定申告書の提出期限の延長の規定」が適用された場合、他の通算法人についても全て、その申告書の提出期限が延長されたものとみなされます。災害等による確定申告書の提出期限の延長|国税庁 (nta.go.jp)また、この提出期限の延長の規定を適用するためには、通算親法人が申請書を通算親法人の納税地の所轄税務署長に提出(適用を受けようとする事業年度終了の日の翌日から45日以内)し、その延長の規定の適用を受ける必要があります。

定額減税、給与所得者は6月給与の源泉徴収から 2024.01.14

先月決定した令和6年度税制改正大綱では、サラリーマンなどの給与所得者(年収2000万円超を除く)の場合、ことしの6月から1人当たり所得税3万円と住民税1万円の定額減税が始まります。減税額については納税者本人に加えて配偶者を含めた扶養家族も対象で、たとえば夫婦と子供2人の4人世帯の場合、扶養者分も含めた計16万円が減税されることになります。000919575.pdf (soumu.go.jp)

所得税の定額減税は、勤務先が従業員に対して給与を支払う際、あらかじめ差し引く所得税や復興特別所得税(源泉徴収額)を定額減税分減らし、その分の手取りを増やす方法で行われ、6月に1人当たり3万円分を一度に減税しきれない分は翌月以降に繰り越して順次減税し、減税額が3万円になるまで続きます。たとえば、毎月支払う源泉所得税額が7000円の場合、6~9月の4カ月間の所得税の減税額は2万8000円でその間の所得税支払額はゼロ、10月には3万円から2万8000円を引いた残額の2000円が減税され、支払額は5000円となり定額減税は完了します。また、定額減税のうち源泉徴収分から控除しきれない金額が生じた場合には、令和7年分の所得税には繰り越さず、基本的に年末調整で対応するとのことです。

一方で、住民税は企業などのシステム上の課題もあり6月分を徴収せず、7月から11カ月間、減税した分の住民税を均等に割り振る方法で徴収します。4人家族で年間の住民税支払額が12万円の場合、減税される4万円を差し引いた8万円が住民税の支払総額となります。この8万円を11カ月間で割った額である7,272円が来年5月まで毎月徴収されることになります。

国税庁「電子帳簿保存法一問一答」に追加問を公表 2024.01.07

令和6年1月1日から、昨年まで電子取引データについて紙出力保存を容認してきた「宥恕措置」に代わり、あらたに「猶予措置」が実施されています。この「猶予措置」とは引き続き紙出力保存が容認されるのではなく、令和6年1月1日からは電子取引データは電子保存することが必要になります。ただ、電子取引データの電子保存にあたっては、税務調査時に出力書面の提示・提出およびデータのダウンロードに応じることができこと等の要件を満たす場合、保存要件は不要で電子保存が認められます。

国税庁は「電子帳簿保存法一問一答(令和5年6月)」00023006-044_03-1.pdf (nta.go.jp)に、国税庁に質問が多かった事項を追加問として整理、集約した「お問い合わせの多いご質問(令和5年12月)」0023011-017.pdf (nta.go.jp)を公表しました。そのなかの【電子取引関係】の追加問(3件)では、① 見積書の名称の書類であっても「正式な見積書前の粗々なもの」などは保存不要 ② ECサイドにおいて商品等を購入した場合、サイト上で確認できれば領収書等データのダウンロード不要 ③ ETC利用証明書は仕入税額控除の適用を受けるためものについては、ダウンロード分のみ電子保存が必要・・が明らかにされています。

ただ現状では、対応が完了していると回答した企業は昨年12月時点において3割弱(帝国データバンク)にとどまり、9割超が電子帳簿保存法への対応に「懸念・課題あり」とし、その理由として業務負担の増加や社内での理解・連携不足などをあげていました。また、企業規模別に対応度合いを見てみると、大企業が38.8%、中小企業が26.8%、小規模企業が21.2%と、規模が小さい企業ほど対応が遅れている実態がわかります。

能登半島地震で被害を受けられた皆様に心からお見舞い申し上げます。 2024.01.02

ことしの元旦の気候はあたたかくて過ごしやすく、比較的穏やかな新年を迎えることができました。午前中行った初詣は、甲賀の山間にひっそり鎮座する油日神社へ。お参りに来られている地元の方の列にまじって、無事に参拝を終えましたが・・。

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夕方突然みまわれた揺れはそれほど強くない割に大きな波長の揺れだったので、わたしはすぐ3.11の大震災を思いだしました。そして、案の定テレビの報道で能登半島で大きな地震があったことを知りました。われわれ日本人はどこに住んでいるにかかわらず、いつ大きな地震に遭遇するかわからないリスクと隣り合わせで生活しています。このたびの能登地方の地震により被害を受けらえた皆様に、心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早いご回復と復旧をお祈り申し上げます。

税理士に外形標準課税の計算機会が増えそうです 2023.12.17

11日に決定した2024年度(令和6年度)税制改正大綱20231214.pdf (nikkei.com)では、たびたび話題になっている個人向けの減税や企業に賃上げを促す税制のほか、都道府県が法人事業税の一部として企業に課す「外形標準課税」の対象を拡充し、課税を強化する方針(76ページ目)も盛り込まれています。具体的な課税標準については、現行の課税標準「資本金1億円超」から「資本金と資本剰余金の合計10億円超」に拡充し、202541日から開始する事業年度から適用されます。

そのほかに「100%子会社等への対応」の項目もあり、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人の100%子会社等のうち、「資本金が1億円以下」で「資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるもの」も外形標準課税の対象(202641日から開始する事業年度から適用)となっていて、こちらの「100%子会社等への対応」の課税標準の条件によって、外形標準課税の計算が必要になる税理士が増えてくるものと思われます。

従来外形標準課税の対象となるのは大企業に限られ、中小企業の税負担に配慮されていました。ところが、総務省の資料によると対象企業数が平成18年度の約3万社から、令和2年度には約2万社まで3分の1が減少したとのことです。その大きな原因は新型コロナウイルス等で業績が悪化した企業が、赤字でも課税される外形標準課税を節約するために資本金を減資するケースが増えたためですが、2023年度までに減資して課税対象外となった企業には追加基準を適用しない等、いろいろな配慮も設けられています。

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