税理士ブログ Blog

日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。

外国人起業家向け「経営・企業ビザ」、資本金要件が3000万円以上へ 2025.08.31

政府(出入国在留管理庁)は日本で起業する外国人経営者向けの「経営・管理ビザ」の要件を厳格化することを826日の法務省令案で公表しました。主な内容は資本金の要件は500万円以上から3000万円以上に引き上げられます。また、経営者の経歴や学歴の要件も新たに設け、本来の目的から外れた不適切なビザの取得を防止するとしています。出入国在留管理庁がパブリックコメント(一般の意見公募)を経て、10月に省令の改正を目指すとのことです。

従来の「経営・企業ビザ」制度では、「500万円以上の資本金」または「2人以上の常勤職員」を用意し、日本国内に事業所を確保すれば、最長5年滞在できることができました。省令の案では、資本金の引き上げだけでなく、「1人以上の常勤職員」も必修になります。また、経験や学歴の要件も追加し、「経営・管理経験3年以上」か「経営・管理に関する修士相当の学位」を求め、中小企業診断士などによる事業計画の確認も義務づけられます。

現行の資本金500万円以上という基準は、旧投資経営ビザの時代から長らく変更されていませんでした。ただ、円安の進行や日本の経済成長により、この金額自体国際的に見て極めて低い水準(同様のビザの場合、米国 15003000万円、韓国 3200万円相当)となり、極端な話し「お金で買えるビザ」と揶揄される状況が生まれていました。とくに、移住目的で、民泊の運営法人や実体のないペーパー会社を設立する事例が目立つことが問題となっていましたので、そういった状況を抑制する狙いがあると思われます。

個人・法人事業者とも、消費税中間申告分の納税資金のご準備を 2025.08.10

8月に入り、対象となる個人事業者へは令和7年1月1日~令和7年12月31日の課税期間分の中間申告書および領収済通知書(納付書)が順次届いていると思います。納期限は令和7年9月1日(月)ですが、すでに令和6年分までに振替納税制度を採用されている方は、今回は令和7年9月29日(月)に同じ銀行口座より引落しになりますので、前日まであらかじめ残高の確認をお願いします。

未だ振替納税制度を利用されていない納税者の方でも、納期限(令和7年9月1日)までに一定の手続きをすれば振替納税を利用することができ、申し込み手続きはe-TAXでも可能になっています。また、昨今の資材や燃料費の高騰による物価高を理由に資金繰りが悪化している事業者については、「令和7年1月1日~6月30日」を一課税期間とみなして、いわゆる「仮決算」を行い、それに基づき消費税等を納税することもできます。仮決算を行う労力が必要になりますが、当初の中間納付額より納税額を減らせます。

一方で、年11回中間申告が適用される法人(3月末決算)で、定期総会の招集日の関係から申告期限を延長した法人税や地方税と同様に、「消費税の申告期限の延長の特例」を提出されている場合、8月中に3回分(対象期間:4月度・5月度・6月度)の中間申告書および納付書が届いていると思います。9月中の納付分からは通常の1回分の納税になりますが、8月納付分についてはあらかじめ納税資金に留意する必要があります。

海外赴任の方へは、労災「特別加入制度」の手続きを 2025.07.20

昨今の円安傾向で一時ほどではないにしろ、海外勤務のある企業は大企業にかかわらず、中小企業でもその機会は一定数あります。その場合の労災保険についてですが、海外での業務が「海外出張」として取り扱われる場合、国内での災害と同様に労災保険給付を受けることができます。一方、「海外赴任」とみなされる場合、海外赴任者として特別加入をしていなければ労災保険給付を受けることができません。というのも、労災保険法の適用については、法律の一般原則として属地主義がとられているため、海外の事業に「派遣」され、その事業に使用される場合には労災保険の対象とならないためです。

そのようなケースに備えて、労働者を海外に派遣する場合には「労災保険特別加入制度」があります。「労災保険特別加入制度」とは、海外に派遣された労働者が現地で労災に遭ったとき、日本の労災保険と同様の補償を受けるための制度です。海外に従業員を派遣する企業は、万が一現地で労働災害に遭った場合に備え、海外派遣日の前に加入手続きをすることをおすすめします。なお、その制度は前述の海外出張者や現地採用者は対象外になります。

「労災保険特別加入制度」の手続きは、国内事業者が特別加入予定者をまとめて「特別加入申請書」に記入し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長あてに提出することにより可能です。加入希望日の30日前から申請書を提出することができ、過去に遡って加入申請はできません。したがって、海外特別加入手続きについては、事前申請だということに注意が必要で、記入記載例は厚生労働省のHPから確認できます。海外での予期せぬ事故や病気は、医療費などが高額になることもありますので、労災保険への加入は、万が一の際の経済的な負担を軽減する上で非常に重要になります。

写真展『光と空間 建築の美』 2025.06.29

週末に大阪へ所用で出掛けた際、お知り合いが会員になっている日本建築写真家協会の写真展『光と空間 建築の美 』(大阪市中央区本町「富士フイルムフォトサロン」)へ行ってきました。この写真展は、建築の撮影を生業とする全国の会員から作品を公募し隔年で写真展の開催を続けていて、16回目となる今回(7月3日(木)まで)は、光と空間をテーマに建築の美をとらえた作品を展示しています。IMG_1208IMG_1206

展示されている作品は、普段建築を記録として撮影することが多い写真家が、仕事での撮影における制約から解き放たれ、自由な感性で切り取った作品を展示しています。各地に点在する歴史的街並み、古建築、近代建築、そして日常何気なく接している現代建築等さまざまな建築、都市の姿を通して、建築にたずさわっている写真家達が、建築、都市の「光と空間」に挑みその表情をとらえていました。IMG_1205IMG_1204

この写真展を鑑賞後、わたしも1930年(昭和5)に旧三菱商事大阪支店として建てられ、戦後は農林省関係のビルとなった「大阪農林会館」(大阪市中央区南船場)に行き撮影。現在は、高い天井や重厚なデザインの内装を活かしたスタイリッシュなショップが集まる商業用ビルとなっています。建物の内部はしっかりと作り込まれた木製の手すりや柱、ドアなど細部にレトロな雰囲気が残っています。IMG_1214IMG_1209

「国外財産調書」(6月30日まで)、提出有無の確認を 2025.06.08

居住者の方(非永住者の方を除きます。)で、その年の1231日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方は、その国外財産の種類・数量・価額その他必要な事項を記載した「国外財産調書」を、その年の翌年の630日までに、住所地等の所轄税務署長に提出しなければなりません。実務においては、国外財産を有するほとんどの納税者の方は、確定申告作業と合わせて提出を完了されると思いますが、確定申告義務のない個人でも「国外財産調書」の提出義務は発生しますので、一度ご自身の国外財産の状況をご確認ください。

また、これらの国外財産は日本円以外の資産を保有(外貨建て)していますので、5,000万円を超えるかどうかは、毎年1231日時点での時価や見積価額に対して、年末又は近日のTTBレート(電信買相場)で円換算することになります。最近は一服していますが、昨今の円安傾向化にあっては、これまで保有資産が5,000万円以下として提出されなかった納税者の方でも提出対象となっている可能性があります。国外財産調書の提出者の国外財産の約6割を占める有価証券ついては、海外市場の相場状況にもよりますが、とくに注意いただきたいと思います。

この「国外財産調書」とは別に、所得金額の合計額が2,000万円超かつ1231日時点3億円以上の財産を保有している等に該当する場合は「財産債務調書」の提出が別途必要となる場合があります。「財産債務調書」は国内外の財産および債務の内容を記載することが求められているため、国外財産についても原則的には「財産債務調書」へ記載します。国外財産が5000万円を超える場合、「財産債務調書」と「国外財産調書」の両方を作成しなければいけませんが、「財産債務調書」には国外財産の価額の合計額以外の記載は不要です。一方、国外の債務については「国外財産調書」の対象ではないため、「財産債務調書」にその詳細を記載する必要があります。

継続と自己肯定感で『ラジオビジネス英語(NHK)』 2025.05.18

ここ数年来、『ラジオビジネス英語』を聞き続けています。番組は3つの内容で構成されていて、月・火・水曜日は英語を駆使してビジネスする日本人主人公によるビジネスシーン。ストーリー性もしっかりしていて、場面場面の展開では英語だけでなく、ビジネスとしても参考になります。2025年4月~5月のストーリーは、日系企業の東京本社に勤務する日本人女性がベトナムでの新規プロジェクトため、ホーチミン市やハノイ市に出張し、現地スタッフや政府関係者とやりとりするダイアログが英語で展開されています。IMG_1201IMG_1202

そこで気付くのは、われわれは英単語を使う場合、すでに日本語になった英単語を使いがちですが、実際には同じ表現で他の英単語があること。たとえば、「裕福な」はrich(リッチ)でなくaffluent、「積極的」はpositive(ポジティブ)でなくproactive、「変革」はchange(チェンジ)でなくtransformation、意見はopinion(オピニオン)でなくinputといった具合に、わたしもできるだけこのような英単語を使っていけたらと思います。

また、木曜日は英文メール講義で、メール表現で押さえておきたいポイントが丁寧に説明されていて、わたしのように外国人とのコミュニケーションがメールをメインとするものには助かる内容。金曜日は日本で活躍する外国人の方のインタビューで、レベルはかなり上級。そして、この番組での講師 柴田真一先生は、番組の中でたびたび「継続と自己肯定感をもって」とおっしゃいます。この『ラジオビジネス英語』ですが、学習レベルとしては英語学習者の中で中級者(ある程度簡単な英語で身近な話題に対して意見が言える人)を対象になりますが、社会人の方にとって毎回身近な内容を取り上げているので、英語を学びたいと考えている方にはぜひチャレンジしてみて欲しい番組と感じています。

中小賃上げ促進税制、この決算期から繰越控除が可能に 2025.05.03

中小企業向け賃上げ税制は、従業員の給与を増加させた中小企業に対して税額控除を認める制度で、対象は資本金1億円以下の青色申告法人になります。この制度の基本的な仕組みは、雇用者給与等支給額が前期比で1.5%以上増加させた場合、その増加額(控除対象雇用者給与等支給増加額)に一定の税額控除率を乗じた金額を法人税額から控除できるというものです。控除率は原則15%ですが、上乗せ措置の適用により最大45%まで引き上げることも可能です。ただ、控除上限額は当期の(調整前)法人税額の20%までで、それを超える金額は控除の対象になりませんでした。(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin06gudebook.pdf)

そのような中、令和6年度税制改正で「繰越税額控除制度」が創設され、従来の制度では赤字や税額控除額が大きい法人でも、令和6年4月1日以後に開始する事業年度から「控除しきれない金額(税額控除限度超過額)」を最大5年間繰り越すことが可能になりました。たとえば、賃上げによる税額控除額が300万円あるにもかかわらず、当期の(調整前)法人税額が1,000万円の場合、従来は200万円の控除(1,000万円×20%)しか受けられませんでしたが、新制度では残りの100万円を5年間にわたって繰り越し、将来の法人税額から控除できます。

この「繰越税額控除制度」を適用するには、① 繰越控除をする事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額(前事業年度)の給与額を超えていること ② 所定の明細書を確定申告書に添付することが必要ですが、新制度により一時的に業績が悪化し赤字になったり、繰越欠損金がある法人などでも、従業員の賃上げによりメリットを将来にわたって享受できるようになります。従業員の新規採用や賃上げを実施したり、景気の影響を受けやすい中小企業にとっては、大きな支援制度といえます。

『パウル・クレー展』 2025.04.19

先週末はあいにくの雨でしたが、329日から兵庫県立美術館で開催されている『パウル・クレー展(創造をめぐる星座)』に行ってきました。JR灘駅から南にミュージアムロードを徒歩10分にあるこの美術館は、延床面積28千㎡もある西日本最大級の美術館で、建築家 安藤忠雄により前面の海に接するなぎさ公園と一体化するよう設計されたもの。館内は通路をめぐらすことにより、この建物そのものを鑑賞の対象にするよう設計されていて、現代的で斬新な造り。わたしの来館時には安藤氏による講演会・サイン会が催されていました。IMG_1173IMG_1177

20世紀スイス・ベルン生まれの画家のパウル・クレーの作品は、独自の色彩表現で知られていて、抽象的な作風ながら、明るく上品な色彩で彩られています。写真右の作品は「無題(最後の静物画)」という油彩画で、クレーが亡くなる年に制作されたもの。この企画展は同時代の他作家の作品も多く展示されて、クレーの作品との比較や交流なども知ることができます。(企画展は5月25日(日)まで開催)IMG_1181IMG_1186

写真は美術館のあと、神戸に来たときはよく立ち寄る居留地にあるカフェからの風景。この時間も雨は降りやまず少々肌寒かったですが、テラス席に座ると海外にいるような雰囲気を楽しめます。IMG_1194IMG_1195

「防衛特別法人税」で税効果会計の実効税率が変わります 2025.03.30

3月末で消費税を含む個人の納税者の確定申告は終了し、41日からは3月末決算法人の決算申告作業がスタートします。そのなかで、中堅企業や大手企業の関連会社には、まず税効果会計で繰延税金資産・負債の計算が必要な場合もあります。今回から留意すべきこととして、2025年度税制改正により202641日以降開始事業年度から適用となる「防衛特別法人税」で、実効税率が変更されることがあります。

この「防衛特別法人税」とは、防衛力強化の財源確保を目的として、各事業年度の所得に対する法人税を課されるすべて法人を対象に、法人税額に対する付加税額として創設されたもので、税額については、『課税標準となる法人税額から、(中小企業に配慮する観点により)基礎控除として年500万円を控除した金額に税率4%を乗じ、税額控除額を差し引いたもの』で計算されます。

したがって、税効果会計の計算で20273月期以降に解消される一時差異(つまり、今回は退職給付引当金などの長期解消分)について、「防衛特別法人税」による変更後の実効税率を適用する必要があり注意が必要です。具体的な実効税率については、東京都(外形標準課税適用外)の場合、変更前 34.59%から変更後35.43%へ(「週刊税務通信 No.3844(令和7324日)より」約1%相当の増額になりますが、東京都以外の法人は所在する自治体の税率を適用することになります。

2025年1⽉から、外国人向け「起業ビザ」制度が全国に拡⼤されています 2025.03.17

2025年1⽉から、⽇本政府は日本で起業を目指す外国⼈向けの新しい「起業ビザ」制度を全国に拡⼤しました。そもそも、「起業ビザ」制度とは、⽇本で起業を目指す外国⼈に対して、より柔軟で魅⼒的な滞在条件を提供するもので、これにより優秀な外国⼈起業家の誘致が加速し、⽇本各地で新たなビジネスが⽣まれることが期待されていました。(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/03_00070.html)

そして、これまでは地域限定で試験運⽤されてきた起業ビザ制度が、20251⽉から全国に拡⼤されています。地⽅への起業家誘致が進むことで、地⽅創⽣や地域経済の活性化にも⼤きく寄与すると考えられます。また、新制度では、最⻑2年間の滞在も認められ、起業準備や事業計画の策定、必要なネットワーク作りなどに時間をかけられるため、ビジネスモデルを構築がしやすくなりました。

本来、起業ビザの取得にあたっては、「経営・管理」ビザで求められるような資本⾦500万円以上や独⽴した事業所の確保など、厳しい要件が課されるケースがあります。しかし、新制度では起業を条件に、これら要件の達成を2年間猶予するという⼤幅な緩和措置も導⼊されています。この猶予期間中に事業を着実に整えられるため、外国⼈にとって⼤きなメリットとなるでしょう。

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