日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
「人材確保等促進税制」、「賃上げ促進税制」 2022.02.28
明日からの3月は、確定申告の提出期限(15日:一定の理由で簡易な方法で申告期限・納付の延長は可能)であり、また多くの法人にとっては年度末でもあります。今回の決算では、新卒・中途採用による外部人材の獲得や人材育成への投資を行う企業(中小企業を除く)に対し、新規雇用者給与等支給額の一定割合を法人税額から控除する「人材確保等促進税制」が適用されます。
ただ、適用要件の一つである「国内新規雇用者の給与等支給額が対前年度増加率2%以上」での「国内新規雇用者」や「新規雇用者給与支給額」の定義はすこし複雑で、比較対象となる「新規雇用者比較給与支給額」になると、前々期に中途採用者まで計算の対象になり場合もあり、この税制を適用するのは当期のみですが、経済産業省「利用ガイドブック」で確認しつつ計算していくことになります。
一方で令和4年4月1日から、企業・個人事業主の積極的な賃上げを促す目的から「賃上げ促進税制」として、従来の税額控除率の拡充が行われます。具体的には、青色申告書を提出する法人・個人事業主で、雇用者全体の給与等支給額の増加額の大企業で最大30%、中小企業では最大40%になります。ただし、この税制のメリットを受けられるのは、当然ですが納税を行っている企業等になり、赤字や繰越欠損金により納税額がない場合は恩恵を受けられません。また、税額控除額については法人税額又は所得税額の20%までと上限が設けられていますので、このあたりを考慮して賃上げや賞与の支給を慎重に決定する必要があります。
滋賀県、独自の上乗せ給付「滋賀県事業継続支援金(第4期)」 2022.02.21
滋賀県は「まん延防止等重点措置」の国への要請を見送っている状況下、重点措置の協力金とは違う形で幅広い業種の事業継続を支援する目的として、2月14日「滋賀県事業継続支援金(第4期)」について3月中旬から申請受付けを開始すると発表しました。支給対象者は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた滋賀県内の中小企業等・個人事業主で、特に業種の指定はなく「国の「事業復活支援金」を受給し、県内に事務所または事業所を有する方」になります。
支給額は中小企業等 20万円、個人事業主 10万円(1事業主につき1回の申請まで)で第1~3期との重複受給も可能です。申請期間は前述のとおり3月中旬から県ホームページでは、現在のところ7月下旬までになっています。国の「事業復活支援金」の申請期限は5月末までですので、その受給後に県の支援金(第4期)の申請する流れになります。
一方、滋賀県下の各市や町の独自給付金については、草津市や栗東市などは1月末で申請受付けは終了していますが、大津市「大津市事業継続応援給付金」(2月末まで)、甲賀市「甲賀市事業継続支援金」(3月25日まで)など、現在申請受付け中のものもあります。各市や町で給付要件も微妙に異なりますので、提出先の要件となる売上高減少割合の基準や対象月・提出書類など、再度ご確認されることをおすすめします。
「野口謙蔵 生誕120年展」 2022.02.14
以前にも紹介した蒲生郡綺田(東近江市)出身の洋画家、野口謙蔵の作品展が開催されている大津市にある滋賀県立美術館へ行ってきました。この美術館は長い間改修工事のため休館し、昨年6月に約4年ぶりリニューアルオープン。緑の多い公園や県立図書館の広々とした敷地内にあり、建物の中に一歩入ると今回のリニューアルの中心になった高い天井と広々としたロビーが迎えてくれます。滋賀県立美術館では滋賀を代表する画家として、従来から謙蔵の作品を紹介してきましたが、ことし2022年は生誕後120年を迎えるということで、現在絵画作品や書簡等の関連資料など約40件を展示しています。
写真左は謙蔵の代表作「霜の朝」(作品展のパンフレットから)。1934年の作品で当時の帝展で特選となり政府買上げ、通常は東京国立近代美術館に所蔵されています。雪の白さと畦道の紅色とで冬の朝の寒さが表現されていて、その中で犬を追いかける女性や飛び立つ鳥の群れの対比が絶妙な作品だと思います。作品展は2月20日まで開催される予定で、この日は地元企業の協賛で拝観料が無料になっていました。今週末は、作品展も終了ということで、学芸員によるギャラリートークや東近江を巡るバスツアーなどがあり、故郷に腰を落ち着け地元の風景を描き続けた謙蔵と滋賀との関わりを知ることができます。
新型コロナで確定申告が困難な方、簡易な方法で申告期限・納付の延長が可能に 2022.02.07
先週2月3日、国税庁より『【所得税等の確定申告について】新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方へ』が発表されました。オミクロン株による感染の急速な拡大にともない、申告が困難となる納税者が増加する状況を踏まえ、令和3年確定申告について、新型コロナウイルス感染症の影響により申告等が困難な方は、令和4年4月15日(金)までの間、簡易な方法により申告・納付期間の延長を申請できることになりました。一方で、令和元年分・2年分で実施したような一律での期限延長はしないとされています。
具体的な期限の延長の方法は、期限後に申告が可能となった時点で、申告書の余白等(書面提出は申告書の右上の余白、確定申告書等作成コーナーでのe-TAXで提出の場合は「送信準備」画面の「特記事項」欄など)に『新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請』と記載することになります。簡易な方法による延長後の申告・納付期限については、原則として令和4年4月15日(金)までに申告書を提出した日が申告・納付の期限になり、令和4年4月16日以降も新型コロナの影響で申告等ができなかった場合、申告等ができるようになった日から2か月以内に「延長申請書」を所轄税務署へ提出する必要が出てきます。振替納税を利用されている方の振替日(現在:申告所得税等 令和4年4月21日(木)、消費税等 令和4年4月26日(火))については、別途お知らせされる見込みです。
TKC、『グループ通算制度 ナビサイト』開設 2022.01.31
令和2年度の税制改正にともない、ことし4月以降開始する事業年度から連結納税制度はグループ通算制度に移行します。㈱TKCが自社の連結納税システム(eConsoliTax)を採用しているユーザー企業(299社)を対象に、グループ通算制度への移行予定を調査したところ、90%超の企業がグループ通算制度を適用するとのことでした。(「週刊税務通信No.3688(令和4年1月24日)」)
ほとんどの企業にとって事務負担の増加等がありますが、移行によるメリットの方が大きいと考えられますので、予想どおりの結果かと思われます。同時に㈱TKCでは『グループ通算制度 ナビサイト』(https://www.tkc.jp/consolidate/lp/group_tsusan/)を開設していて、その中にはグループ通算制度適用した場合の「シュミレーションシート」がダウンロードできる機能などがあり便利なサイトですが、ちなみに「グループ通算申告システム」については現在「準備中」とのことでした。
また、国税庁は昨年12月に、文書で「グループ通算制度の適用法人(親法人および子法人)は、法人税および地方法人税を電子申告により行う必要がある」と注意喚起を行っています。もし、書面により提出した場合には、その申告書は無効なものと取り扱われ無申告加算税の対象になり、特に通算子法人にとっては電子申告の際、誰が電子署名するか、ログインID・PWや利用者識別番号など含めて押さえておきたい事項です。
「事業復活支援金」の申請要領等が公表されます 2022.01.24
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2021年11月~2022年3月のいずれかの月の売上高が、2018年11月~2021年3月までの間の任意の同じ月の売上高と比較して50%以上又は30%以上50%未満減少した事業者が給付対象になり得る「事業復活支援金」、今週(1/24の週)申請要領等が公表され、1月31日の週からは事務局で申請受付を開始する予定になっています。(滋賀県事業継続支援金を申請した事業者へは、滋賀県商工政策課から個別に「事業復活支援金」のお知らせメールが届いています)
給付額は「基準期間の売上高-対象月の売上高×5」が基本ですが、売上減少率(30%以上50%未満、50%以上)や法人では基準月を含む事業年度の年間売上高(1億円以下、1億円超5億円以上、5億円超)による給付上限額(個人事業者 30万円・50万円、法人 60万円~250万円の6段階)が設けられていています。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響の内容については、需要の減少による影響や供給の制約による影響など具体的な事例が示されていて、その裏付けとなる書類の追加提示を求められる場合もあります。
この「事業復活支援金」については一時支援金・月次支援金と同様、認定経営革新等支援機関などの事前確認が必要ですが、一時支援金・月次支援金の既受給者は改めて事前確認は不要で、作成済のアカウントの活用も可能です。詳細については今後変更される可能性があります。最新の情報は事業復活支援金事務局ホームページ(https://jigyou-fukkatsu.go.jp/)で確認されるとよいでしょう。
英語の経理のための必須本 2022.01.17
1月は年末調整による源泉所得税の納付(納期の特例)や法定調書の提出など、我々税理士にとって何かと業務の多い時期になります。一方、外資系の会社はその規模にかかわらず12月末決算がほとんどのため、現在英文経理や英文会計に取り組んでいる経理の方もおられると思います。それほど英語による経理の経験がなく、英語の会計用語にお困りの方にお勧めするのは『英文会計用語辞典(中央経済社)』があります。わたしが持っているのは「第3版」(写真)ですが、いまのところ「第4版」まで出ていて、経理のみでなく財務会計、管理会計、監査など、会計全般の用語について英和編および和英編の両方から編成されていて非常に便利です。
また、英文経理の以前の話しとして、外資系の法人や日本にお住まいの外国人の方が日本で会社を設立する場合に便利な書籍として『インバウンド会社設立ガイド(中央経済社)』が出版されています。日本で会社設立するにあたり、実務で必要な事柄がQ&A方式で左のページは日本語・右のページは英語で対比して記載されていて、税理士や会計士などにとっても、設立を希望される方への説明に使い勝手のよい一冊になっています。たとえば、外国人の方が日本で会社を設立して何かビジネスを始める場合、在留資格のほか「経営・管理」ビザを取得する必要があります。そのほか、500万円以上の資本金や2名以上の常勤職員等いくつかの条件があり、通常はビザ申請から取得まで数か月を要します。設立にあたっては、外国人の対応を専門されている行政書士さんや司法書士さんがおられますので、そちらへ相談されるのがよいと思います。
大津市、滋賀県事業継続支援金(第2期・第3期)に上乗せ給付 2022.01.10
すでに草津市、栗東市、守山市などは「滋賀県事業継続支援金(第3期)」の支給決定を受けた事業者に、一定の条件のもと、上乗せ措置として市独自の支援金(中小企業者等10万円、個人事業主5万円)を給付しています(申請期間:令和4年1月31日まで)。一方、大津市では先月末ホームページより、第3期だけでなく、第2期の「滋賀県事業継続支援金」の給付決定を受けている市内に事業所または事務所を有している中小企業者等に、「大津市事業継続応援給付金」として中小企業者等20万円・個人事業主10万円の給付することを発表しています。
また、給付対象者は「滋賀県事業継続支援金」の第2期・第3期の給付決定を受けている中小企業者等だけでなく、「国の月次支援金(7~10月分のいずれか)の給付決定を受けているもの」、それ以外でも 「① 2021年7~10月のいずれかの月の売上高が2019年または2020年の同月と比較して50%以上の減少 ②2021年7~10月のいずれかの連続する2ヶ月の売上の合計が2019年または2020年の同月と比較して30%以上の減少」となっていて、他市の支援金の条件と比べて取扱い範囲が広くなっています。
国や県の支援金を受給されなかった事業者でも、給付対象になる可能性がありますので確認が必要になります。申請受付期間は令和4年2月28日(月)まで(問合せ先:大津市産業観光部 商工労働政策課 077-528-2754)。また滋賀県内の他市町より県支援金の上乗せ支援金を受給されている場合は対象になりません。
謹賀新年 2022.01.03
みなさま、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
写真は小売り各社の初売りに向かうため、大阪へ行った途中に立ち寄った露天神社(つゆのてんじんじゃ)。この神社は人形浄瑠璃の題目から「お初天神」の名でよく知られていています。神社そのものは雑居ビルやアーケード商店街のあいだに挟まれ、こじんまりとして梅田駅から徒歩約10分ですが、都会の喧騒の中でオアシスのような場所。この日も正月にかかわらず参拝者は、まばらでひっそりとしていました。
一方、初売り店舗はどこも開店前から多くの行列客が出いていて、こちらの客足は前年から大きく回復している様子。ミナミの街も多くの人たちが繰り出していて、もとに戻ってきたように感じます。新聞記事によると、主要企業106社に実施したアンケートでは、2022年の国内景気を拡大傾向と見込んだ企業は84%(過去5年の年初まとめと比べて最も高かった)にものぼったとのこと。新型コロナウイルスが日本の国民へ大きな影響を与えてもう丸2年、ことしこそ収束して力強い経済の回復を望みたいものです。
令和4年1月1日以後の対象者へ、税務署から『「国外財産調書制度」のあらまし』 2021.12.27
居住者(「非永住者」の方を除きます。)の方で、その年の12月31日において、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方は、その財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、その年の翌年の3月15日までに、住所地等の所得税務署に提出しなければなりません。なお、国外財産調書の提出に当たっては、別途「国外財産調書合計表」を作成し、添付する必要があります。(『「国外財産調書制度」のあらまし』より)
ここでの「「非永住者」の方を除きます」の「非永住者」とは、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である方をいいます。したがって、日本の国籍を有してない方でも、過去10年間の期間で国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年を超えた場合(非永住者以外の居住者)、その超えた年から翌年3月15日まで国外財産調書の提出義務が生じます。
つまり、令和3年12月末で国外財産の合計額が5,000万円を超える方については、令和3年分の所得税の確定申告書の提出義務の有無にかかわらず、令和4年3月15日までに国外財産調書の提出が必要になりますのでご注意ください。なお、合わせて財産債務調書を提出する場合には、その財産債務調書には、国外財産調書に記載した国外財産に関する事項の記載は要しない(国外財産の価額を除く。)こととされています。