日々、税理士業務を行うにあたって、経験したこと、感じたことを関与先の守秘義務を順守しつつ、わかりやすく文章にしていきたいと思いますので、お付き合いください。
国税庁「電子帳簿保存法一問一答」に追加問を公表 2024.01.07
令和6年1月1日から、昨年まで電子取引データについて紙出力保存を容認してきた「宥恕措置」に代わり、あらたに「猶予措置」が実施されています。この「猶予措置」とは引き続き紙出力保存が容認されるのではなく、令和6年1月1日からは電子取引データは電子保存することが必要になります。ただ、電子取引データの電子保存にあたっては、税務調査時に出力書面の提示・提出およびデータのダウンロードに応じることができこと等の要件を満たす場合、保存要件は不要で電子保存が認められます。
国税庁は「電子帳簿保存法一問一答(令和5年6月)」00023006-044_03-1.pdf (nta.go.jp)に、国税庁に質問が多かった事項を追加問として整理、集約した「お問い合わせの多いご質問(令和5年12月)」0023011-017.pdf (nta.go.jp)を公表しました。そのなかの【電子取引関係】の追加問(3件)では、① 見積書の名称の書類であっても「正式な見積書前の粗々なもの」などは保存不要 ② ECサイドにおいて商品等を購入した場合、サイト上で確認できれば領収書等データのダウンロード不要 ③ ETC利用証明書は仕入税額控除の適用を受けるためものについては、ダウンロード分のみ電子保存が必要・・が明らかにされています。
ただ現状では、対応が完了していると回答した企業は昨年12月時点において3割弱(帝国データバンク)にとどまり、9割超が電子帳簿保存法への対応に「懸念・課題あり」とし、その理由として業務負担の増加や社内での理解・連携不足などをあげていました。また、企業規模別に対応度合いを見てみると、大企業が38.8%、中小企業が26.8%、小規模企業が21.2%と、規模が小さい企業ほど対応が遅れている実態がわかります。
能登半島地震で被害を受けられた皆様に心からお見舞い申し上げます。 2024.01.02
ことしの元旦の気候はあたたかくて過ごしやすく、比較的穏やかな新年を迎えることができました。午前中行った初詣は、甲賀の山間にひっそり鎮座する油日神社へ。お参りに来られている地元の方の列にまじって、無事に参拝を終えましたが・・。
夕方突然みまわれた揺れはそれほど強くない割に大きな波長の揺れだったので、わたしはすぐ3.11の大震災を思いだしました。そして、案の定テレビの報道で能登半島で大きな地震があったことを知りました。われわれ日本人はどこに住んでいるにかかわらず、いつ大きな地震に遭遇するかわからないリスクと隣り合わせで生活しています。このたびの能登地方の地震により被害を受けらえた皆様に、心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早いご回復と復旧をお祈り申し上げます。
税理士に外形標準課税の計算機会が増えそうです 2023.12.17
11日に決定した2024年度(令和6年度)税制改正大綱20231214.pdf (nikkei.com)では、たびたび話題になっている個人向けの減税や企業に賃上げを促す税制のほか、都道府県が法人事業税の一部として企業に課す「外形標準課税」の対象を拡充し、課税を強化する方針(76ページ目)も盛り込まれています。具体的な課税標準については、現行の課税標準「資本金1億円超」から「資本金と資本剰余金の合計10億円超」に拡充し、2025年4月1日から開始する事業年度から適用されます。
そのほかに「100%子会社等への対応」の項目もあり、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人の100%子会社等のうち、「資本金が1億円以下」で「資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるもの」も外形標準課税の対象(2026年4月1日から開始する事業年度から適用)となっていて、こちらの「100%子会社等への対応」の課税標準の条件によって、外形標準課税の計算が必要になる税理士が増えてくるものと思われます。
従来外形標準課税の対象となるのは大企業に限られ、中小企業の税負担に配慮されていました。ところが、総務省の資料によると対象企業数が平成18年度の約3万社から、令和2年度には約2万社まで3分の1が減少したとのことです。その大きな原因は新型コロナウイルス等で業績が悪化した企業が、赤字でも課税される外形標準課税を節約するために資本金を減資するケースが増えたためですが、2023年度までに減資して課税対象外となった企業には追加基準を適用しない等、いろいろな配慮も設けられています。
財産債務調書、令和5年分から提出期限を「翌年6月30日」に延長 2023.12.10
令和4年度税制改正で財産債務調書制度が見直されています。この制度は、現行ではその年分の所得が2000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の有価証券等国外転出特例対象財産を有する場合には、財産の種類や数量、価額、債務の金額などを記載した調書を、その年の翌年の3月15日までに所轄税務署長に提出しなければならないというもの。ただ、所得2000万円以下の者は財産債務調書の提出義務者の範囲から外れるため、仮に高額の資産を保有していてもその年分の所得が低いもしくはゼロであれば、調書の提出義務はなく、資産の移動状況の把握が不十分になっていました。見直しでは、提出義務者に所得要件を設けずに、財産の価額の合計額が10億円以上の者を加えられ、令和5年分以後の財産債務調書について適用されます。
一方で、提出期限は緩和され、現行の提出期限であるその年の翌年の3月15日から「その年の翌年の6月30日」となっています。国外財産調書についても同様になります。また、財産債務調書への記載を運用上省略することができる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準を300万円未満(現行:100万円未満)に引き上げられ、これらの改正は令和5年分以後の財産債務調書、国外財産調書について適用されます。zaisan_leaflet.pdf (nta.go.jp)
また、「国外財産調書」とは、居住者(「非永住者」の方を除きます)の方で、その年の12月31日おいて、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する場合、その財産の種類・数量および価額等を記載の提出を求められるもの。kaigaizaisan_tirashi.pdf (nta.go.jp)また、この「価額」はその年の12月31日における「時価」または時価に準ずる「見積価額」となります。「邦貨換算」は12月31日の「外国為替の売買相場」ですので、最近の円安により新たに提出条件に該当することも考えられます。令和5年12月31日の為替換算により提出対象になる可能性のある方は、提出期限(令和6年6月30日)までに自身の国外財産の価額を確認が必要になります。
来日5年を経過する外国人の申告の有無と新しい扶養控除制度 2023.12.03
日本の所得税の取扱い上、日本に居住する外国人の方はその居住形態によって、課税される対象の所得が大きく異なります。まず「非居住者」、「居住者」のどちらに該当するか、そして「居住者」に該当した場合でも「非永住者以外の居住者(永住者)」か「非永住者」を判定することが重要です。そのうち「非永住者」とは、『居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人』が要件になります。No.2010 納税義務者となる個人|国税庁 (nta.go.jp)
一方、課税対象の範囲は、① 「非永住者以外の居住者」の方は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して(全世界課税方式)。② 「非永住者」の方は、(ア) 国外源泉所得以外の所得 (イ) 国外源泉所得で国内において支払われ又は国外から送金されたもの・・ですので、年の中途で5年経過し「非永住者」から「非永住者以外の居住者」になった場合、それ以降の期間(令和5年6月30日で5年経過のケース:令和5年7月1日~12月31日)は本国で生じた所得も含めて、日本での確定申告(翌年3月15日まで)が必要になると考えられます。たとえば、外国人の方で本国に所有する不動産に賃貸収入などがある場合、「非永住者以外の居住者」となってからは、その賃貸収入等も含むすべての所得に対し、日本の税法に従って所得および税額を計算しなければいけません(賃貸収入等に課された外国の税金については、日本申告時に外国税額控除や必要経費に算入可)。
ことし来日して通算5年間が経過する外国人の方については、このような税務上の取扱いを考慮し、本国で対象となる課税所得や日本での確定申告の有無などを確認する必要がありますし、また令和5年分の確定申告からは扶養控除制度が変更され、国外に居住する親族(「非居住者親族」)である扶養控除等の適用対象者のうち30歳以上70歳未満の者は原則除外されていて注意が必要です。ただ、① 留学により国内に住所および居住を有しなくなった人 ② 障害者 ③ その居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人については、例外的に適用対象となっています。0022009-107_01.pdf (nta.go.jp)
国税庁、追加で「(インボイス制度)多く寄せられるご質問」を公表 2023.11.26
国税庁はすでに10月に公表した「インボイスQ&A(令和5年10月改訂)」の後、11月13日には国税当局に寄せられた質問等に対応するため、全13問となるインボイス制度の「多くの寄せられるご質問」を公表しました。0521-1334-faq.pdf (nta.go.jp)たとえば、冒頭の問①「1.登録申請の処理状況の確認方法」では登録通知時期の目安の確認方法(現在、e-Tax提出、書面提出とも提出から約1か月必要)や「2.ご自身の登録番号がわからなくなった場合の確認方法」では通知書を紛失してしまった場合の対応方法などが記されています。特集 インボイス制度 (nta.go.jp)
また、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる「経過措置」があった場合の帳簿や請求書等の保存方法が説明されていますが(問⑤)、帳簿に記載するべき方法として、たとえば「80%控除対象」や「(免)」など、請求書等についても一定の項目(書類の作成者の氏名・名称、課税資産の譲渡等を行った年月日・内容、税率ごとの税込価額等)を記載しておく必要があります。
いわゆる「2割特例」を適用できるインボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者になった方の中には、みなし仕入率が90%で消費税の簡易課税制度が適用できる「卸売業」の方もおられます。その場合、「2割特例」はみなし仕入率80%相当のため、簡易課税制度(みなし仕入率90%)を選択した方が有利になります。その場合の対応方法も記されていて(問⑬)、「消費税簡易課税制度選択届出書」をその課税期間の末日(その末日が土日・国民の祝日であっても、これらの日の翌日とはならない)提出します。また、「2割特例」や簡易課税制度自体は消費税の還付額は生じないしくみなっていますが、多額の設備投資などで還付が見込まれる場合は、その点も踏まえて選択するかどうか検討する必要があります。
甲賀水口宿の紅葉 2023.11.20
この一週間でかなり冷え込んできて、ようやく晩秋らしくなってきました。週末、わたしは甲賀市水口町に行くことがあり、東海道五十番目の宿場町だった街並みを楽しみながら、東海道からすこし外れた場所にある紅葉で有名な大池寺(甲賀市水口町名坂)へ寄ってきました。ここには江戸初期の近江の大名、茶人、建築家で各地に多くの名園を残した小堀遠州の作と伝わる枯山水様式の蓬莱庭園があります。
この大池寺(だいちじ)は丘陵に囲まれた閑静な地にある臨済宗妙心寺派の寺院で、敷地内にある書院よりつづく茶室前から見られる蓬莱山石組も美しく、サツキの大刈込みは5月下旬から6月初旬には見頃になるそうです。寺の周囲にはその名のとおり4つの大きなため池があり、その真ん中に本堂を建てたのが寺の始まりといわれています。この日はときおり霰(あられ)も降る荒れた天気でしたが、駐車場から寺に向かう散策に最適な小道端にあるモミジもようやく色づき始め、団体の観光客の方も鑑賞に訪れていました。
写真左は帰りに通った夕日を背にした水口城跡(甲賀市水口町本丸)の風景。現在は城内部の資料館には入れませんが、周囲から見るとなかなか立派な堀を備えている水口藩2万5千石の居城で、大池寺庭園を作庭した前述の小堀遠州が徳川将軍の上洛時にあわせて宿館として築かせたものといわれています。
令和5年分年末調整、国外居住親族に係る扶養控除の要件が変わります 2023.11.13
ようやく季節外れの暑さも和らいて今年もあと1か月あまり、12月からは(令和5年分)年末調整の時期になります。今回の年末調整での改正点では、国外に居住する親族(以下、「非居住者親族」)である扶養控除等の適用対象者のうち30歳以上70歳未満の者は原則除外されることになりました。ただし、① 留学により国内に住所および居住を有しなくなった人 ② 障害者 ③ その居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人については、例外的に適用対象となります。0022009-107_01.pdf (nta.go.jp)
従来から非居住者親族が居る場合、扶養控除適用には「給与所得者の扶養控除等申請書」の他、「親族関係書類」(戸籍の附表の写しそのたの国・地方公共団体が発行した書類、非居住者親族の旅券の写しなど)や「送金関係書類」(非居住者である親族への金融機関発行の送金書類、クレジットカード発行会社が発行したカード利用明細書類など)の提出または提示が必要とされていました。[手続名] 国外居住親族に対する送金関係書類の明細書|国税庁 (nta.go.jp)
これに加えて令和5年分からは、30歳以上70歳未満の留学生(上記①の者)については扶養控除等申告書等の提出時に「留学ビザ等書類」(外国査証(ビザ)や在留カードの写し)、38万円以上の送金を受けている者(上記③の者)は年末調整時に「38万円送金書類」が新たに追加されました。外国人を従業員として雇用している会社にとって、外国人が日本で給与等を得た場合には年末調整が必要となり、その際にもこれらの書類(とくに「38万円送金書類」)の提出または提示が求められますので注意が必要です。
『デイヴィッド・ホックニー展』 2023.11.04
今週は所用により季節外れのほぼ夏日となった東京へ。前日までにすべて予定が終了したこの日、新幹線で帰路に立つ前にすこし時間を見つけて東京都現在美術館(東京メトロ 清澄白河駅から徒歩15分)の『デイヴィッド・ホックニー展』へ行ってきました。デイヴィッド・ホックニー(1937-)はイギリスの画家・芸術家で、イギリスの20世紀の現代アートを代表する1人。この催し物はテレビでも紹介され話題になっていて(わたしもこれで知りました)、作品の展示はこの週末までで終了するということで、この日は外国人も含めたくさんの方が鑑賞に訪れていました。
作品自体は明るい陽光を感じさせる華やかな色彩で、室内の風景、自身の邸宅や人物を描いたものが多かったですが、なかには(撮影できる作品が限られていてご紹介できないですが)色彩を絞った白黒のみのデッサン画も多くあります。2018年のあるオークションでは彼の作品が約9000万米ドル(約102億円:当時の換算レート)で落札されたとのことで、これは今なお破られていない現存作家(現在86歳)による最高落札価格です。
写真右は彼の作品(池の睡蓮と鉢植えの花)を6枚組のiPad絵画でアニメーションとして6台の55インチ・モニターで上映したもの。現在、創作活動の拠点としているフランス・ノルマンディーの風景だそうで、アニメーションで作品が完成する過程も知ることができ、おもしろい表現方法になっています。
「フィッシング詐欺」への注意とその対策について 2023.10.30
電子メールやWebサイト等の電子的な技術を用いて、オンライバンク・クレジットカード会社・ソーシャルネットワークサービス・オンラインゲーム・決済代行サービス・e-コマースなどの企業名(ブランド)やサービスを装い、住所・氏名・銀行口座番号・クレジットカード番号・ログインIDやパスワードなどの個人情報を詐取することを「フィッシング詐欺」といって、わたしのようなTKC全国会の会員宛にも㈱TKCを装った「フィッシング詐欺」を目的とする詐欺メールが届いています。
このような詐欺への防止策を公開している専門機関によれば、次のような対策が有効とのことです。①クレジットカード情報等の重要情報の確認を求めるメールの添付ファイル・リンクへはクリックしないこと。(金融機関はメールを通じてクレジットカード情報等を確認することはない) ②よく利用するサイトは、ブラウザのお気に入りに登録し、そこから接続すること。メール内リンクは使用しないこと。 ③クレジットカード会社・銀行等の問合せ先をひかえておき、メールの内容が少しでも「おかしい」と感じたら、すぐに連絡して真偽を確認すること。 ④メール内リンクをクリックした後に、クレジットカード情報等を入力する画面が表示されたら、何も入力せずブラウザを閉じること。 ⑤Windows・ブラウザ・ウィルス対策プログラムなどは、常に最新版となるようアップデートすること。フィッシング対策協議会 Council of Anti-Phishing Japan | マンガでわかるフィッシング詐欺対策 5 ヶ条 (antiphishing.jp)
「詐欺メール」は内部リンクをクリックすると、クレジットカード情報等を入力する画面が表示され、その画面で入力された情報は、詐欺グループの手に渡ります。メール内のリンクをクリックした後、クレジットカード情報等の入力する画面が表示されたら、それは「詐欺」ですので、絶対に入力しないようにしましょう。もし、誤ってクレジットカード情報・口座番号を入力してしまった場合、すぐに金融機関に連絡してください。パスワードを入力してしまった場合であれば、パスワードの変更し以前のパスワードは2度と使用しないようにする必要があります。